お待たせしました、感想記事後編です。

前編はこちらからどうぞ。

本題の前に少し書き忘れていた事を。
レスキューをムサシがコジロウの毒によって呼ぼうとしていた時に、キテルグマが連れ帰ってくれたところが完全に救急車のサイレン(しかもドップラー効果付き)なのには遊び心が感じられました。

さて、ククイ博士の家に連れてこられたヒドイデですが、あのゴンベがきのみをあげたりしたもののそれを食べようとしませんでしたね。
それほどコジロウの行動と自分の気持ちとの狭間を彷徨っているのでしょう。
コジロウの元に素直に行ければ良いのに、センパイと共にある事がコジロウの望む事…なので迂闊に前に進む事ができないわけです。
その悲しみの気持ちはどれほどのものだったでしょうか。

…とはいえゴンベが渡したモモンのみは毒を消すものなので、ある意味ではヒドイデに1番渡してはいけないものな気はします(笑)
こういう所は渡し慣れていない優しさがあったように思いました。
その代わりに、バーネットがスペシャルブレンドのポケモンフーズを作ってくれていました。
ここで女性がククイ家にいることの良さが出るんですよね、何回か野生ポケモンを連れ帰ることはあっても、ニャビーを始めあまり何もできなかったケースが多かったので。
ククイ博士も探していることを承知で引き入れ、元気になったら戻そう、と元気になる事を望みながら触れにくい所を感じていましたし。

その点、ヒドイデはこのポケモンブースを食べてくれたかは不明ですが、同じ女性として食べ物で接しようとする姿はやはりククイ博士やサトシが手を出さずにバーネットに任せるだけの良さがあると思いましたね。
とはいえ、ヒドイデの決め手になったのはポケモンフーズを食べるように言った時のサトシの笑顔だったりするのですが。
コジロウはロケット団の中でも随一の優しさを誇っているので、こうやって笑顔を見せてきた事は結構あったと思うんですよ。
ここでのサトシはどんなポケモンであっても優しく接する姿を見せてくれたわけですが(例えロケット団のポケモンであっても)、それが随一の優しさのコジロウと被った、というわけです。

…まあそのポケモンフーズを食べようとしていたゴンベにバーネットが釘をさすシーンは面白かったですが(笑)この団欒の雰囲気にロケット団の居場所を思い出したのは間違いなさそうです。
そして夜に砂浜にコソクムシが通り過ぎていく中(恐らく酷い、と姑息、をかけたのでしょうね(笑))、ヒドイデは夜空にコジロウを感じながら今までのコジロウとの思い出に思いを馳せます…
最初はセンパイと外見が似ているという事から好きになったヒドイデ。
ここは「恋に恋していたヒドイデが憧れのセンパイに恋をした」という流れから完全なる恋愛モノのテンプレなので、まだ外見のみの恋で本気の恋とは中々言い難い状況です。
実際、センパイに噛まれた時のコジロウの顔を見てハートを撃ち抜かれそうになってましたから。

ですが色々な出来事(新映像として一緒に走ってみたり一つのジュースをストロー二つで分け合ったりボートに一緒に乗ってみたり…夫婦ですかねぇ?(笑))を通じて、完全にコジロウの優しさに心から好きになっていった…
これは恋に恋をし、ただ単に憧れと外見から好きになったセンパイとは完全に違う形での恋です。テンプレからは一気に外れたわけです。
センパイに出会い、その事でコジロウを苦しめてしまった後に、自分の思いを再確認した結果コジロウのことが本気で好きなのだと改めて気付く…
だからこそ涙を流しながら朝になって眠っていたカットの美しさが光るというわけです…
しかもかかっていた毛布…というのがまた粋じゃないですか。
ちなみに毛布をかけた人、最後の描写からしてバーネットだと思います、本当によく出来た女性であり(ククイ博士の)嫁ですよね。

夜空にコジロウを浮かべていたヒドイデですが、朝日が差し込んでいたとなればコジロウを感じられない分、自分の気持ちに従って前に進むしかありません。
その事を演出で示しながらも自分が行ったらコジロウが困るのではないか、という気持ちから歩く足取りがまだ落ち込んだままになっているというのがヒドイデの辛いところですよね…
ちなみにここでヒドイデが進んでいる方向は左なのですが、これまでの映像を見返してもらえるとセンパイがカメラ目線で必ずと言って良いほど右にいて、コジロウが左にいたので、コジロウの方向に向かっていると思って間違い無いと思います。

とはいえここのヒドイデの気持ちは結構複雑な所です。
コジロウの思いを汲み取りながら、でも自分の思いのままに行動するけれども…という事からコジロウに会いたいという気持ちからコジロウの方向に前に進むものの、心の中ではまだコジロウの気持ちとの葛藤から落ち込むまま…という二つの気持ちが同時進行で動いているので。
それでも体が動いているのはサトシの笑顔と夜にコジロウを想ったことでコジロウへの想いを再認識したからというのは間違い無いと思います。
動かず止まっていたサトシたちに見つけられる前からは変わってますからね。
なので行動が本能、心の中が理性とヒドイデの中では言えるかもしれませんね。

そうこうしていると、突然ドククラゲがヒドイデに向かって襲いかかってきたんです!
そんなセンパイとのエピソードと絡む部分を持ってきて一転してピンチになるヒドイデですが、そこにドククラゲを思いっきり蹴ってヒドイデを助けるコジロウの姿が!
しかもその後に「大丈夫か、ヒドイデ」と来るわけですからこれはもうコジロウの心をも好きになったヒドイデからすれば再度落ちてもおかしくは無いでしょう。
ここでコジロウが探しにきたのはセンパイの元に引き渡すのとヒドイデがいなくなって心配する気持ちはまた別だからなんですよね。

確かに手放した方がいいとは思っていても、それはヒドイデの幸せを願っているからこそです。
だからこそ毒が抜けた時、つまりはヒドイデを本当にセンパイに引き渡す強い決心がついた時に探し、見つけることができたというわけです。
ヒドイデの幸せを本当に願っている、ですがそれはヒドイデの本当の幸せでは無い…すれ違いとは儚いものですね…
その証拠にヒドイデは「コジロウが迎えにきてくれた!また一緒に居られるんだ!」と可愛らしく抱きついてきましたから。
この可愛い感じがまたコジロウとの決断との違いがありこちらが悲しくなるのですが…
この時のムサシやニャースの姿からも察するものがあります。

そして抱きついたのも束の間、センパイがやってきてコジロウはセンパイのところに向かわせようとヒドイデをこれまた右方向に押そうとします。
こんな頼りない自分よりも頼もしくて強いセンパイのところに行って欲しいという気持ちが強かったからこそのコジロウの押し…その事が押しが強すぎてヒドイデを転ばす結果になってしまったのが本当に悲しいところで…
センパイのところに行くのが本意ではない、ずっとコジロウの元に居たいと思っているのにコジロウは無理やりセンパイのところに行こうとしている。
その事が如何にヒドイデの気持ちを無視しているのか、というのをこの砂にまみれた転がしからでも分かりますから。

更には転がしてしまった事に気付いてしまうものの、ヒドイデがコジロウに目を向けた時にはコジロウは既にヒドイデを見て居なかった…
ヒドイデの立場からすればコジロウはなんて酷いやつなんだ、となるかもしれませんが、コジロウの立場からすれば自分の弱さが見えたからこその決別なので…ヒドイデの気持ちを無視してしまっても仕方ないところはあるんです。
この時にヒドイデの気持ちまでも汲み取れるのならは、不器用に1番向いていないであろう悪役をやっていないと思うので…
この不完全さこそがロケット団を象徴しているのかもしれませんね…ある意味では人間の性とも言えると思います。
実際ポケモンと違って人間には裏があるので…
ヒドイデを見ないようにしたのも自分の決断が揺らがないようにという辛い気持ちもあったと思いますから。

そのままヒドイデの悪口を言っているようで自分に言い聞かせている部分も存在しましたしね…コジロウの事を考えると本当に辛いところです…
ですがセンパイが後ろを向いたままのコジロウを攻撃して、自分の思いとヒドイデの心の中を代弁してくれました。
ここでの後ろを向いていたコジロウは一貫してカメラ越しには右を向いていて、つまりはセンパイの元に行く事を望んでいたのですが、センパイに攻撃をされて左を向いています。
つまりは本心をセンパイに思い出させたという図になるわけです。
ではニャースの訳を見てみましょう。

ヒドイデを泣かせたコジロウに腹が立っている。
取り敢えずコテンパンにしないと気が済まない。
お前のような軟弱なやつに泣き虫ちゃん(ヒドイデ)は渡せない。
俺は誰よりも泣き虫ちゃんの幸せを願っている。
(コジロウが自分もヒドイデの幸せを願っていると言った事に対して)だったら俺を返り討ちにして泣き虫ちゃんを奪い返してみろ!
もう泣き虫ちゃんが泣くのを見たくないから…
幸せを願うなら泣き虫ちゃんの涙を止めてみろ!


この部分、一見すると前半と後半で言っている事が矛盾しているように聞こえるのですが、センパイはヒドイデの心がコジロウにあることは既に見抜いています。
まあAパートで毒まみれにしたセンパイに「何してくれるの!」と怒るヒドイデを見てますからね。
なのでヒドイデの涙もあってヒドイデはコジロウの元に戻るのがいいと思っています。
ですが肝心のコジロウがヒドイデの気持ちも推し量れないような軟弱な奴ならばヒドイデを渡すつもりはない…「お前のような軟弱なやつ」に渡せないのであって、ヒドイデの涙を止める、つまりは「ヒドイデの事を本当に思い強くなれたコジロウ」ならば渡してもいいと思っているんです。

この時のコジロウは確かに明らかにヒドイデの気持ちが見えてなくて側から見たら自己完結させようとしている軟弱なやつに見えるのも不思議ではありませんから、センパイの叱咤は間違っていないんです。
だからこそ左を向かせてヒドイデの涙を見せた上でヒドイデの幸せの本当の姿を見せた上で同じ土俵に立たせて正々堂々の勝負をコジロウに挑んだんですよ。これが格好いいと言わずしてなんと言いましょうか。
ヒドイデの涙は「コジロウと離れなくてはいけない故」の涙なので、それを見ずに自分の気持ちを押し付けるコジロウに腹が立っていたのもありますが、それでも自分が良い思いをする事なくヒドイデの気持ちも考えた上での行動ならば、かなり真摯的と言えるので。

そんなセンパイからのある種の叱咤激励によってコジロウは本当の意味で「ヒドイデの幸せ」を追い求めるためにセンパイとバトルするわけです!
最初でヒドイデの気持ちを分かってやれとムサシやニャースから非難され、ヒドイデの気持ちを思ってヒドイデをセンパイに引き渡す決断をした結果、実際のところはヒドイデの心を無視する結果となってしまった…
リアリティの塊とはこの事を言うのでしょうね、複雑ながらロジカルはしっかりしていました。
関根さんの脚本の特徴に、リアル志向なものの構成自体はオーソドックス、というのがありますが、正にコジロウの心情がそれと言えたと思います。


そんなわけでコジロウとセンパイがまさかの生身でバトルする事になりますが、ミサイルばりに関しては完全に避けるばかりで防戦一方でした。
これに対して「大丈夫大丈夫!」「行けるニャ!」と無責任にいうムサシとニャース…人ごとだと完全に発言が無責任になるのは第三者あるあると言えそうです。
そしてヒドイデの応援に直接向かっていこうとしたら軽くあしらわれて砂浜に撃沈…直接行く勇気が出たものの見た目は格好悪い感じになってしまいました。
ですが心意気さえ良ければそれで良しのセンパイの立場なので、これでも「ヒドイデの幸せを願う故の行動」なので良いのではないでしょうか。
実際、この情けなさがコジロウな感じがしますし(笑)

そうしているとそのまままたセンパイに毒漬けにされてしまいますが、なんとヒドイデの幸せを願う強い心で毒を解いて見せたんです!
これは序盤の怒りによる復活から伏線がとられていましたし、ヒドイデからドヒドイデに参加したことで毒の威力が強くなっているにもかかわらずこの復活の速さですからヒドイデをセンパイに引き渡す決断をした時よりも格段に思いが強くなっているのが分かります。
ここら辺は本来の合理性というよりは話の中での合理性なのでアリだと僕は思いました。

そして毒が効かないと分かるや否や行われたのは二人によるポカポカという擬音語が相応しいような幼稚に見える殴り合い…ヒドイデは喜んでいましたが普通は「いつになったら終わるのこれ?」というムサシとニャースと同じ反応になりますよね(笑)
恋愛沙汰というのは三人称視点では分からないことも存在する…そう言ったものです。
なので三人称視点では恋愛模様が本格的になると野次馬根性でしかなくなると思いますし…これもリアルと言えるのではないでしょうか。

そして三人称視点が置き去りになるバトルが繰り広げられた後には「昨日の敵は今日の友」という感じにセンパイとヒドイデが握手をすると…
これでセンパイがコジロウの事を認め、コジロウもヒドイデへの恋愛感情ではなく普通にポケモンとしての思いを再認識した…まあ良かったのではないでしょうか。
実際、別れる時にヒドイデがセンパイに対して初めて左を向いていましたし…やっとこさ和解ができたと言えるのではないでしょうか。

…と、こうしているとまたもやドククラゲが襲いかかってきたわけですが、それをコジロウが以前センパイがヒドイデを助けた時のようにドククラゲの触手を持ってそのまま投げ飛ばして救ったんです!
この行動にセンパイがまさかの目を輝かせてコジロウにサンゴを渡すという行動に…
サンゴは元々ヒドイデの女の子の間で流行っていた事で、更に本気で惚れていたヒドイデにサンゴを渡そうとしていました。
ですがそれを断られた後にこうしてコジロウに…
あっ…ということでどうぞお察しください…

そんなわけでムサシ達がまたもや人ごとの無責任さを見せながら、無事解決してこの話は終わります。
呑気に起きたサトシもバーネットから解決した事を聞いたので、めでたしめでたしですね。
しかしこの一部始終を声は聞こえないとはいえ見ていたバーネットは一体どんな気持ちになっていたのでしょうか…
ヒドイデ自体にはきちんと向き合っていたとは思いますが。(パジャマでの立ち姿がまた良い味出してますね(笑))

では最後にこんなコミカルな終わり方からのナレーションの真面目さを見て終わりたいと思います。

偶然が結んだ絆は、優しさでギュッと強くなる。
ポケモンとトレーナーの出会いは、いつだってそんな奇跡の連続なのだ。


…意味深にも聞こえるのは気のせいでしょう。

というわけで次回はマオとスイレンの小さい頃の出会いになります!
小さい頃が描かれるのは珍しいですが、果たしてどうなるでしょうか?
楽しみにしたいと思います。