さて、今回は気合を入れまして、「となりの妖怪さん」の最終回の感想をリアタイ視聴した後で描いていきたいと思います。
それでは続きからどうぞ。

第13話(最終回)
脚本:金春智子/絵コンテ:吉岡忍,山内愛弥,池田ユウキ/演出:山内愛弥,池田ユウキ,前原萌/作画監督:西真由子,竹島照子,斎藤梢,露木愛里,他8名

妖力が戻った山本最後の置き土産は、自分が尊いと思っていた人と妖怪の関係性の再生だったと考えると人間臭さが見えた気がしました。

というわけで、流石に最終回ともなるとかなり要点を抜き出しての駆け足になっていた印象でしたが、総じていい最終回だったと思います。
というよりは出てきたキャラのその後をBパート以降で漏れなく綺麗に描いた分、最終回前半の展開での「みんな戻ってきた!」の際の言霊の描写の際の思いを紡いだのが睦実、拓海、りょうの3人しかいなかったので、
その言霊の分のドラマが少なく見えた結果、時間の都合上釣り合わない事になってしまった、と言った方が良いでしょうか。おっちゃんとか最後しか出てこなかったので…

とはいえこればかりはしょうがないですし、あそこの無の空間に睦実、拓海、りょうが来たのは言霊を強く持てる子供だったからなのと、これまでの話群の節目でハイライトになってきた人間だから、というのが大きかったと思うのでベストチョイスだったと思っています。
睦実は3話でのジローを救った大杉の結界の一連の出来事、拓海はぶちおが猫又になった時の思いの原点、りょうは虹が助けた時の竜神周りの気持ちの強さ(睦実がみんなでジローを助けようとした時に真っ先にその後を追ったので)と、ぶちおや拓海伝いに3人の存在を知っていた山本が後を託すに十分な物を持っていたと思うので。
この辺りは、原作者のnoho先生がドラえもんを意識しているのだとしたら、「ねじまき都市」の「種まく者」辺りを意識した描写なのかな?とは思いましたね。
空間断裂が起こった事によって分身と共に散り散りになっていた妖力が元に戻ったものの、それを自分が生きる事に使う事無く言霊を全方位に広げて神々を復活させる事に使い、「後を託す」…正に同じ流れだったと思うので。
なので山本だけがいなくなってしまったこの世界は悲しくはありますが(しかも無の世界での出来事は現世ではあまり覚えていないという…まあその世界では妖怪の存在も曖昧になっていたので現世と隔離された精神世界という意味合いだとは思います)前を向いてほしい所です。
人は産まれた時には1人だけれども、そこから人との繋がりを得る事で1人では生きていけなくなる、という山本の回顧は、山本が愛した人と妖怪の世界の真理を突いていたと思うので。

後、境界線崩壊は平行世界で大きな自然災害が起こった事で、無の世界がこちら側に押し出されて穴が開いた、という事だったので、この一連の出来事が「災害」とされた事、喪った人を忘れない、いつどうなるか分からないから今!という気持ちが出てきた事、そして春真っ盛りだったことを考えると多分向こうの世界の東日本大震災とリンクさせてきた可能性はあると思っています。
だからこそ世界が反転した時の喪失感を直接的な描写は避けつつ、「妖怪の喪失」を面と向かって描いていたのだと思います。コトネが虹の喪失を見てしばらく学校に行けなかった事も一種のPTSDだったと思いますし、ぶちおが最後の言葉を残して顔を描く事なく猫又から寿命の尽きた猫に戻る描写も相当ショッキングでしたし。
でもその中で自分の運命を達観していたジローを何も言わずに抱きしめた睦実の強さは凄い物がありましたね…自分もキツイ状態でジローが戻ってきた時には真っ先に抱きしめた中で、です。
後は大人周りは田中に関しては全く慌てる事無く百合に接していたのがやはり豪胆だったなと最後まで思いましたね。

まあ正直、震災の教訓みたいな要素は唐突にも見えましたけど、災害の描写自体はハル周りの喪失描写の時に結構描いていましたし、災害周りは突然来るのが当たり前ではあるのでそこの流れで引っ張ってきたと考えれば納得はできたかと…
鬼についても「天狗が倒すべき存在」として無意識に言霊を使って認識してしまったが故に虚数世界に呑まれた人間の体の受け皿になってしまっていた、と結論付けられてましたね。
真守が結界を抜けて杉本家の人達に会いに来たことで考えを改められた事、元はと言えばこの世界の人間は「異形」である妖怪を受け容れてくれた事など本筋を上手く絡めた結論の出し方だったと思います。現に平行世界から来た女性などは妖怪を怖がっていたので…

そしてりょうと虹周りについても、ちゃんと虹を無視していた事を面と向かって謝れたりょうはこれだけで良い男だなぁなんて思ってしまいました(笑)これが出来なくてすれ違うラブコメを結構見てきた気はするので…その上で想いが通じたのも良かった所です。
マーさん周りについても「アユム」と改めて名前を付けられて、山本みたいな髪型になった上で「真守みたいな存在」として生きる事になりましたね。ここで咲喜が改めてフューチャーされていたのを見ると、もう少し本編に絡めたらもっと感情移入できただろうなとは思いました。こればかりは原作からのカット部分だったとは思いますけど…

そして最後は水神の生まれ変わりの赤ちゃんの存在もジローに見えつつ、夏のいつも通りの日常に戻って行って終了と…OPが流れていた時の一枚絵を見ると拓海が動画編集について教えてもらっていたり、和彦とワーゲンの描写、おっちゃんとその釣り仲間の描写等、駆け足ながらもどうにしかして描写を拾おうと頑張っていたとは思いますね。


というわけで、フォロワーの方が強く推されていたアニメだったので見始めた「となりの妖怪さん」でしたが、13話の作品とは思えない位山が多い作品で凄い作品に出合えたなぁと思えた作品でした。
大杉の結界しかり、百合の平行世界からの帰還しかり、虹の水神とのかかわりの中での帰還しかり…ちゃんとそれらを伏線にした上で今回の言霊による妖怪の帰還を描いたわけですから、短い尺の中で構成の金春さんも相当頑張って形にしていたのが良く分かりましたね。
金春さんが1クールもので全話脚本をしたのは最近では珍しいですけど、それだけ気合を入れていたという事ですし、実際伴っていたのが凄かったと思いました。まだまだ現役ですね…!
しかしこれだけの作品が今クールの作品群の中では相当マイナーな作品になってしまっていたのは相当惜しいと言いますか…今なら完結してちゃんと原作の本筋はやり切っていたと思うので、この記事を見た方で気になった方がいたようでしたら1話からさらって見る事をお勧めします。

というわけで良い視聴体験をありがとうございました。次クールは何のアニメの感想を書くかはまだ決めていませんがそこでも宜しくお願い致します。