さて、遂に始まりました「薫る花は凛と咲く」ですが、早速その1話の感想を書いていきたいと思います。
ちなみに自分は先行上映にて1,2話を見ているので、現時点ではスムーズに感想記事を書く事ができるかもですが、3話以降は恐らく瞬発力の勝負となるので今からどうなるか…と戦々恐々してます。
それでは続きから感想です!
[追記]冒頭の合唱曲が「春に」という曲だと分かったのでその部分の文面を変えています。もうちょっとちゃんと調べるべきでしたね…
(引用動画サムネURL:https://www.youtube.com/watch?v=KEIlHZqYfSY&t=4s)
ちなみに自分は先行上映にて1,2話を見ているので、現時点ではスムーズに感想記事を書く事ができるかもですが、3話以降は恐らく瞬発力の勝負となるので今からどうなるか…と戦々恐々してます。
それでは続きから感想です!
[追記]冒頭の合唱曲が「春に」という曲だと分かったのでその部分の文面を変えています。もうちょっとちゃんと調べるべきでしたね…
(引用動画サムネURL:https://www.youtube.com/watch?v=KEIlHZqYfSY&t=4s)
第1話「凛太郎と薫子」
脚本:山崎莉乃/絵コンテ,演出:黒木美幸/作画監督:徳岡紘平,梅下麻奈未
新たな学園ドラマの始まりと、その2つの学校の隔絶と交わる瞬間…それらが凄く丁寧に描かれていた、素晴らしい1話だったと思います。
という、黒木監督のコンテ演出回という事で、「薫る花」のカラーを完璧にアニメに落とし込んだ話となりました。
話の構成自体は原作の1話そのままなのでかなり緩やかに進むのと、「この作画が凄い!」みたいな派手さはないんですけど、でもその穏やかさがそのまま「薫る花」のアニメのカラーを物語っているような、そんな優しさの詰まった話になっていたと思います。
これが「薫る花」のアニメにおいてやりたかった事なんだろうな、というのが伝わってきたという感じです。
それだけでなく、黒木監督によってかなり絵的なアニオリ要素や演出が追加されているので、原作からかなり描写としては補完されているような、そんな印象すら受けたのも凄かったですね。
という感じで、では事前に書いておいた原作の感想メモを載せていきながら、アニメの感想と並行して書いていきます。
(OPとEDについては別記事にてまとめて取り上げようと思うのでここでは省略します)
まず、いきなりこの1話の冒頭なんですけど、桔梗と千鳥が隣同士という事で、2つの学校風景からスタートしてるんですよね。
全景を映し出して、勉強している様子については、最初が凛太郎の授業風景なので両校ともに一致してるんですけど、
桔梗の方は合唱曲として有名と言われている「春に」の「この気持ちはなんだろう」のフレーズ合唱で、千鳥はサッカーの描写を映してと、ある種桔梗と千鳥のパブリックイメージをそのまま映し出して、「学園ドラマ」としての色を強くしてるんですよ。
これが、「薫る花」の空気感作りの一発目として凄くノスタルジックな気持ちにさせてくれるのが素晴らしいんですよ。いきなりここでアニオリをぶつけてくるその考えが凄いと思いました。
そして桔梗サイドの合唱なんですけど、コーラスの歌詞だけ見たら随分と恋愛関係にピンポイントだな、となるんですけど、ここで歌われているフレーズが「この気持ちはなんだろう この気持ちはなんだろう ぼくの腹へ 胸へ そしてのどへ声にならないさけびとなってこみあげてくる この気持ちはなんだろう」なので、そのまま未知の感情をそのままストレートに表に伝える、という「薫る花」のテーマ性ともあってるのが凄いんですよ。有名な曲とはいえ、ここまで「薫る花」の始まりを飾るに相応しいフレーズの曲があったとは…という感じです。
そしてこの合唱が千鳥の様子を映し出している時も流しているので、千鳥と桔梗、学校は違えど恋愛などの色々な感情は等しく同じという事を示したかったような気がするんですよね。
この話は凛太郎と薫子の恋愛感情だけでなくて、本当に色々な感情が交差する話なので、それをまずテーマとして置きたかったのかなと。それを如何にもお嬢様な「桔梗の生徒の合唱」という学校要素全開で見せてくれたので、この時点でアニメを見ている側としては引き込まれた次第です。
カーテンが閉まっている桔梗。特に桔梗との対立については何も思っていない凛太郎(それが当たり前になっているから)
浮気騒ぎで女にビンタされていた男に声をかけただけで世話になったと言われる→暗闇と高身長、風貌もあって誤解されがち→翔平達と対立していた時の言葉も「コイツらなにかしたんすか」からも優しさが見える→それでも逃げられても「人にメーワクかけんな」(夜に凛太郎は怖いよね、に対して)「はいはい」と流している→諦め?
ここの凛太郎のモノローグはカットされていたかと思いますが、凛太郎が不良2人に声をかける前の周りから恐れられている描写の所が駅の改札から階段を登って出てくる描写に変更されてるんですよね。
この後で、凛太郎が薫子を駅で見送る時が階段無しのの改札になっていたので、その対比で暗闇から出てくる、という描写を対比にして暗闇の無感情の中で生きてきた凛太郎が、地上に出る事で明るい所に出ながら暗がりの人間、という事を表したかったのではないか?と思うんですね。
それと上にも書いた「優しさが見える」については、実際に声の演技でも申し訳なさそうに言葉を紡いでましたね。
アニメで見ると凛太郎の外見上の怖さは結構描写されていたので、その分ギャップで凛太郎の普通にしていたら見えにくそうな人の良さが現れていたとも思います。
ハンカチを落として拾ってもらっても使いたくないからと突っぱねる桔梗2人
「お嬢様はバカなんかとは関わりたくないって」ここで千鳥と桔梗の隣り合わせのカットが出る。この台詞を頭が良い朔が言っている事に、千鳥を守る気持ちと桔梗への諦め(こちらは凛太郎の無関心というよりは攻撃的?)が朔なりに見える。
ここはアニメでは、すれ違いざまに桔梗の生徒2人が下を向くという動作が追加されてましたね。この回における「下を向く」は拒絶などのネガティブな意味合いを持つので、正に千鳥を嫌っている桔梗の象徴的な部分が現れているかと思います。
にしたって拒絶度合いが凄いようにも感じますけども…ここで凛太郎の無感情ぶりと朔のちょっと毒舌気味な部分の対比を描くのは面白いですよね。
「俺らに対してはお嬢様のカケラもない」「卒業したら一生関係ない人種だしな」最早「人種」と言ってる時点で凛太郎からしたら異星人のように桔梗は見えているかもしれない。→これも一種の凛太郎が貼っている「桔梗へのレッテル」への伏線
実家がケーキ屋である事を友達に言った事がない→最初はここから凛太郎の負のレッテルが始まっているから
ここの「人種」のくだりのについては、凛太郎の無感情さを象徴する場面なんですよね。基本関わらないこと前提といいますか。
で、ここの桔梗と千鳥のくだりなんですけど、桔梗がピアノ、千鳥が如何にもアホそうなBGMで結構音楽での対比が強いのが面白いんですね。
ピアノのイメージは冒頭の合唱でついているのでらしいな、とは思うんですけども。そこからの侮蔑の目のカットインとガラス破壊ですから、どれだけ桔梗は千鳥を嫌っているんだ…というのがアニメで見ていて強調されているのが良かったです。
そのガラスと連想してなのか、桔梗のカーテンがかかった校舎が遠ざかる時にピンボケして、そしてガラスを通して千鳥の教室に入っていく、という千鳥から見ても桔梗の存在が、レッテルでぼやけて見える、というのを強調している演出も、地味ながら良かったと思います。
2人席のテーブルいっぱいにケーキの皿を並べて完食している薫子→リスのような口と小ささから「中学生」と凛太郎から思われても不思議ではない。ここでもレッテルは見えているのと、薫子の芯の強さとのギャップを狙っている。
とはいえ、ここで好きな人にいきなり声をかけられたものだから、吹き出しがギザギザして荒くなっている。髪こそウェーブがかかっているけれども服装はラフで驚いたはずみで逃げ出している、正に薫子としては「最悪な再会の仕方」
薫子的にはその驚きがあるけれども、凛太郎からは「またビビられたから逃げられた」と勘違いしているので、薫子の想いは気づかない仕様となっている。これがあるから上に書いたような薫子の後のギャップが響く。
ここの薫子の描写の一挙手一投足が、アニメで見てると本当に可愛くてですね…初っ端から動く薫子の可愛さ全開というのが出ていましたね。
そして店のドアを閉める描写を見せる事で、凛太郎から見ての「拒絶」を強調されているように見えて印象に残りました。「ありがとうございました」を言う前に店を出られているので。
ここから外越しに店の中を映す描写がしばらく出てくるのですが、多分凛太郎と薫子の少し壁を感じるようなぎくしゃく感を演出したかったのかな、と思っています。声も終始ここでは緊張気味なので。
そしてこのタイミングで杏子が登場するわけですけど、声優さんが日笠陽子さんという事で、普通に実年齢よりも若い方の登板となりましたね。(杏子が46歳、日笠さんが今年で40歳)
とはいえ外見の「若すぎない年相応な感じ」は出しつつ、でも声はサバサバしたような引っ張って行くような感じがある、というのは出ていて良い配役だったと思います。
ケーキに燃えてる時の声なんか、演出もあって妙な前向きさで好感持てますし。
凛太郎は自己評価が低いので周りからの思いには気づきづらい。「あんた何でも自分のせいにし過ぎよ」
学校で悩んでいて翔平から「オレらの出番?」と言われても何も話そうとしない→この反応を絢斗が見ていてその変化を気づく事になる
「トラウマになってたらどうしよう、あの子」謝りに行こうとしていたのもあって優しいのはあるが、杏子に言われても自分のせい感が抜けていない
この時の凛太郎は結構色々な事を諦めている故に無感情となっているので、人に自分の本心を隠す事が当たり前になっているんですよね。
凛太郎に限らず、このアニメのキャラは何か起こった時に他人のせいに一切せずに、自分のせいと強く思ってしまう優しい気持ちを持っているのが殆どなんですけど、凛太郎はそれが他人から良い評価を受けてなかったから、それが顕著になっているというのがキツイといいますか…
だからこそ、遠景に凛太郎と千鳥3人の間にバッグで壁を作っているという芸コマは流石の演出だと思いました。
後日、店に居なくともオシャレをした上で凛太郎を杏子伝いに呼ぶ薫子→逃げてしまった事と「最悪の再会」になった事を1つの勇気で変えようとしている。→なので自分がケーキを食べる事無く奢るという妙な事になる。ちょっと焦っている?
でもケーキを前によだれが抑えきれない可愛さ。そこで譲る凛太郎も優しさが見える
家まで我慢できなくてケーキをバク食いしていた可愛いポイント
薫子がこの時点で凛太郎を同い年と知っていて敬語で話していた理由は、一応後で「ケーキ屋の一客だから」としていたが、この時点で薫子の方もかなり凛太郎に遠慮している節はある。これ以上望むのは贅沢だと一歩引いている?
敬語については多分3話位で劇中でも話題に上ると思いますが、ここの薫子の遠慮はアニメで見ると「勇気」ともイコールになってるんだなと分かるんですね。
というのも、ここの「おごります!」に限らず、凛太郎に対して何か行動を起こそうとする時に即座に言うのではなくて必ず間があるんですよ。最初は凛太郎が気まずくなりそうな空気感と言いますか。
それと薫子が待つ時に止まっている足元を見せる所は後々の演出で効いてきますし、自分の手を握った後の薫子が最初の「勇気」と考えると感慨深い物があるんですね。
それほど凛太郎に遠慮をする中で自分の気持ちを伝えたい!という「勇気」が薫子に行動を起こさせている、というのが分かるのでそれだけで最初の薫子への解像度が上がるという物でした。
ケーキを前にしたよだれのデフォルメ絵の可愛さ、涙を流しながら食べている可愛さもアニメならではでしたし。(花の咲き方がかわいらしく)
ちなみに凛太郎と薫子が「おごります!」の後に対面している時の原作の効果音が「ちゃーーん」なんですけど、アニメだとこういうちょっとオシャレな音になるんだな、と感じたのはアニメならではの発見だった気がします。「カラン」みたいな。
「やっと知れたー…」通い続けて名前まで辿り着かなかった薫子の勇気が実った瞬間。その時点で「凛太郎くん」と名前呼びなのが強さを感じる。
「男の人にあんなにじっと見られたの初めてで、ドキドキしただけ…です」これもずっと凛太郎を最初の出会い以外では遠くから見ていたからこその経験。凛太郎の「今まであってきた人と薫子の違い」を端的に示した言葉でもある。「わかんねー」
ここの描写、ケーキだけでなくコーヒーのティーカップもアニメではセットになっていて、薫子の「違くて」の声の震え具合からも分かる通り、薫子が上のセリフをつぶやく時に手を少し遊ばせている所にいじらしさを感じられますし(名前を聞く時に間があるのもまた良し)、
凛太郎の場合はコーヒーがある事で、コーヒー越しに自分の金髪&ピアスを見つめ直し(ここで影がついているのもポイント)、昔良い風に言われなかった事を回想し、
顔を上げると薫子のドキドキした表情が映し出される、という事で驚きも含めての「わかんねー」に説得力を持たせているこの演出が素晴らしかったですね。
ここでちゃんと「顔を上げる」という動作が鍵になっているのが明確になっていましたし。
それと、「知れた」というキーワードは、2話に向けて覚えておくと、話が分かりやすいと思います。
夜道の中で送ろうとした凛太郎を薫子が「大丈夫」と返すのは、凛太郎の優しさと薫子の一歩引いた姿が見える。
「凛太郎くんを”怖い”って思ったこと一度もなかったですよ?」「信じてくださいね」とニーっとする破壊力。真正面から「そう思った事ない」と言われたらそれは嬉しいような困惑するような表情に、二階の自室に戻りながらなるというのはある。今までと全く違う反応。
ここの薫子の台詞の前にも間があって、薫子がそれなりの距離を歩いてから話していたので、ここで自分の気持ちを伝える、という勇気があったのが分かるのが良いですね。
これは間違いなく、これまで凛太郎が言われた事がなかった事だと思うので。
後ここで独自の回想シーンが追加されていて、「否定的なことしか」の回想のモブの「似合わないね」の顔が影に消えるシルエットのようになっていて見えない描写があるんですよ。
このシーン、原作では普通に顔が見えてるんですけど、ここではさながらサスペンスアニメにでも出てきそうなシルエットの人物として描かれているのがかなり凛太郎が幼少期傷ついたのが分かるようになってるのが悲壮感が凄いんですよね。(その前にこのモブの顔は出てはいるので、凛太郎の心境の暗さを強調しているとも言えます)
その影に怯えるように机に突っ伏している凛太郎の描写の中で、その影が生まれては消えているので尚更です。
先程翔平達に絡んでいた不良が凛太郎の当てつけにわざわざ薫子に絡みに来る。
「あいつ怖いって有名だよ?」後輩が恐怖心を抱かれたからと、同調感覚で薫子にも噂を言っているワル。作中ではこの周りの連中くらいしか悪いやつらはいないので尚の事悪辣さに拍車がかかっている
ここで凛太郎が「仕方ねぇか」で済ませているのが諦めの境地を見たような気がしました。要は傷ついていないんですよね。
「どうしてただの噂だけで人を決めつけられるんですか?」
震えていた手を握りしめて「ならせめて知ろうともしないのに好き勝手言うのはやめて頂けますか?」「不愉快です」「知る」という言葉を使った薫子の芯の強さと、これも薫子の勇気の1つだと思う。凛太郎の笑顔を思い浮かべて、一つでも凛太郎の「負のレッテル」を否定しようとしてくれている姿…
薫子を助ける時の反動で壁に頭をぶつけた事を「薫子を信じる事が出来なかった自分への罰」としている時点で、凛太郎の自己評価が低すぎる所以でもある。
ここの薫子の声が終始震えているのが、これも勇気を振り絞って紡いだ言葉なんだな…というのを強く感じられましたし(凛太郎に「ドキドキしただけ」と言った時には目が泳いでいて、ここの「不愉快です」の時は泳いでいないのも、薫子の心境が見える様でした)、
この後の凛太郎も「できましたか?」も威嚇しているようではなく、外見に反してちゃんと震えているのが、薫子の為に動いた、という凛太郎の感情の出し方に説得力を持たせていて良かったと思います。
そして薫子が絡まれている場所が店の閉まっているシャッター前に変更されているので、凛太郎が頭をぶつける場所が壁からシャッターに変更されているんですね。
これは単純にコンクリートの壁だと危ない、というのもあったと思うんですけど、壁と違ってシャッターは開ける事ができるからこそ、千鳥と桔梗の関係性、凛太郎と薫子の関係性が切り開かれる契機になる描写として見せたかったのではないか、とも思うんですね。
凛太郎の中での「罰」として、開けられるはずのシャッターを開けなかった(ここの場合は薫子に怖い思いをさせた、信じ切れなかった事)と考えればそこも納得が行きますし。
「こんな優しい人に怖い思いをさせた」手が震えていた事からも見えた事。薫子の凄い所は自分の好きな人のため、という下心なしで「凛太郎を真っすぐ見る優しさ」で動けるという所。「助けてくれてありがとう」と笑顔。多分ここでハンカチを使っているのは、ハンカチを捨てた桔梗女子生徒2人との対比
ここでの「怖い思いをさせた」の時に回想しているのが、「不愉快です」の薫子の真っすぐな目、というのが、薫子の芯の強さを「優しさ」と凛太郎が形容している、というのが分かる演出も良かったですね。
そして額を拭く時、「ありがとう」と言っている時、アニメでは薫子はかかとを上げて背伸びしているんですよね。
これは凛太郎への歩み寄りでもありますし、これによって下を向いて謝っていた凛太郎の「顔を上げる」事にも繋がる(しかも「ありがとう」という直接の感謝の気持ちを正面から受けている)わけですから、このシーンが凛太郎の薫子が「救いになっている」というのが分かるのが素晴らしいと思ったわけです。
桔梗生徒が「顔を下にしてハンカチを捨てるように言った」のとは正に反対の描写となっています。
「評価なんて期待してなかった 諦めてたのに欲が出ちまいそうになる」これも凛太郎に対して遠慮気味な薫子との同質
ここでの回想シーンは左に凛太郎、右にモブの人物を配置した上でそれを2つのボックスで隔絶させつつ離れる事で相容れない、期待していないのを強調しているのがこれも凛太郎の一部分だと示されているようでした。
だからこそ、かかとを上げて凛太郎に向き合ってくれた薫子の、凛太郎の中での特異さが強調されているのが演出としていいと思ったわけです。
「今度は一緒に食べましょうね、ケーキ!」後に桔梗の子と分かる前に「レッテルに囚われる事無く「一緒に何かをする」という事をしようとする」薫子の真っすぐさが笑顔と共に見えている
ここで薫子を守るために凛太郎に肩を抱かれた事を意識しているのもまた、ちょっとした下心のようなものが出ていて良い
ここでの薫子も「間を空けて一歩踏み出している」という段階を踏んでいる事で、これまた薫子の凛太郎と少しでも接点を作ろうとする「勇気」が見られて、この勇気の連続で最初の凛太郎と薫子の出会いは成り立っていたんだな、というのが分かって、薫子の初期の人間臭さが出ていたようにも思いました。
これが薫子が「階段でないまっ平な道」の改札前で、雑多居るモブの人々の間に挟まれながらも、その中で一歩踏み出す薫子、という演出ですから、それまでの足の演出もあって凛太郎への薫子からの歩み寄り、という点では最初の一歩と言えるのではないでしょうか。
抱かれた肩を押さえていた、というアニオリ描写も駅のホームの中で光っていたと思いますし。
桔梗の向こうに薫子が見えた時に咄嗟に千鳥サイドからカーテンを閉めてしまった凛太郎。壁を作ってしまった証拠。ある種異星人として見ていたからこその驚きと反射的な壁。
薫子が驚いていたのは同じく千鳥に凛太郎がいたからだけど…全然意味合いが凛太郎と違うと分かるのはまた後の話。
1話の引きであり、タイトルの「凛太郎と薫子」が輝くここのシーンですが、「寝付けなかった」といっていた凛太郎が学校内で目を瞑った時に「ありがとう」と言う薫子が映っているというのが、薫子の事が凛太郎の頭から離れていないというのを感じられて、恋愛軸としてニヤニヤできる所ではありました。
そこからの凛太郎の中での「落差」になっている「和栗さんが桔梗の生徒だった」という事実が出てくるわけですけども…
後カーテンを閉める時の「…ぷはぁ!」の凛太郎の息遣いについては、驚きで息をするのも忘れていた、という凛太郎の心境の切実さが見られて良かったと思います。
というわけで薫子の遠慮がありながらの「勇気」が、間違いなく凛太郎に真っすぐ届いて、凛太郎が変わる契機になっていく、というのが演出からの強く感じられた1話でした。
黒木監督の事を別に侮っていたわけではないのですが、まさかここまで凄いアニオリでの演出のプラスを作ってくれるとは…という気持ちにさせてくれました。素晴らしかったと思います。
初回ながらOPとEDが映像付きで放送された、というのも個人的には嬉しい所でした。1話だとこれを省略するケースが本当に多いので。
ちなみに他のクレジットですけど、塚田先生の名前「慎」っていうんですね。確か名前は出て来てなかったと思いますから、このクレジットで名前を知る事ができたのは1つ発見だったかもしれないです。
それとちょこちょこ端役で出ている大塚さんは、今後何か関わる事になるのでしょうか…?
というわけで次回は2話、先行映像でも出ていた薫子の満面の笑顔がラストに来るであろう所まで、どう話を持って行くか、ですね。一度見てはいますが楽しみにしたいと思います。
脚本:山崎莉乃/絵コンテ,演出:黒木美幸/作画監督:徳岡紘平,梅下麻奈未
新たな学園ドラマの始まりと、その2つの学校の隔絶と交わる瞬間…それらが凄く丁寧に描かれていた、素晴らしい1話だったと思います。
という、黒木監督のコンテ演出回という事で、「薫る花」のカラーを完璧にアニメに落とし込んだ話となりました。
話の構成自体は原作の1話そのままなのでかなり緩やかに進むのと、「この作画が凄い!」みたいな派手さはないんですけど、でもその穏やかさがそのまま「薫る花」のアニメのカラーを物語っているような、そんな優しさの詰まった話になっていたと思います。
これが「薫る花」のアニメにおいてやりたかった事なんだろうな、というのが伝わってきたという感じです。
それだけでなく、黒木監督によってかなり絵的なアニオリ要素や演出が追加されているので、原作からかなり描写としては補完されているような、そんな印象すら受けたのも凄かったですね。
という感じで、では事前に書いておいた原作の感想メモを載せていきながら、アニメの感想と並行して書いていきます。
(OPとEDについては別記事にてまとめて取り上げようと思うのでここでは省略します)
まず、いきなりこの1話の冒頭なんですけど、桔梗と千鳥が隣同士という事で、2つの学校風景からスタートしてるんですよね。
全景を映し出して、勉強している様子については、最初が凛太郎の授業風景なので両校ともに一致してるんですけど、
桔梗の方は合唱曲として有名と言われている「春に」の「この気持ちはなんだろう」のフレーズ合唱で、千鳥はサッカーの描写を映してと、ある種桔梗と千鳥のパブリックイメージをそのまま映し出して、「学園ドラマ」としての色を強くしてるんですよ。
これが、「薫る花」の空気感作りの一発目として凄くノスタルジックな気持ちにさせてくれるのが素晴らしいんですよ。いきなりここでアニオリをぶつけてくるその考えが凄いと思いました。
そして桔梗サイドの合唱なんですけど、コーラスの歌詞だけ見たら随分と恋愛関係にピンポイントだな、となるんですけど、ここで歌われているフレーズが「この気持ちはなんだろう この気持ちはなんだろう ぼくの腹へ 胸へ そしてのどへ声にならないさけびとなってこみあげてくる この気持ちはなんだろう」なので、そのまま未知の感情をそのままストレートに表に伝える、という「薫る花」のテーマ性ともあってるのが凄いんですよ。有名な曲とはいえ、ここまで「薫る花」の始まりを飾るに相応しいフレーズの曲があったとは…という感じです。
そしてこの合唱が千鳥の様子を映し出している時も流しているので、千鳥と桔梗、学校は違えど恋愛などの色々な感情は等しく同じという事を示したかったような気がするんですよね。
この話は凛太郎と薫子の恋愛感情だけでなくて、本当に色々な感情が交差する話なので、それをまずテーマとして置きたかったのかなと。それを如何にもお嬢様な「桔梗の生徒の合唱」という学校要素全開で見せてくれたので、この時点でアニメを見ている側としては引き込まれた次第です。
カーテンが閉まっている桔梗。特に桔梗との対立については何も思っていない凛太郎(それが当たり前になっているから)
浮気騒ぎで女にビンタされていた男に声をかけただけで世話になったと言われる→暗闇と高身長、風貌もあって誤解されがち→翔平達と対立していた時の言葉も「コイツらなにかしたんすか」からも優しさが見える→それでも逃げられても「人にメーワクかけんな」(夜に凛太郎は怖いよね、に対して)「はいはい」と流している→諦め?
ここの凛太郎のモノローグはカットされていたかと思いますが、凛太郎が不良2人に声をかける前の周りから恐れられている描写の所が駅の改札から階段を登って出てくる描写に変更されてるんですよね。
この後で、凛太郎が薫子を駅で見送る時が階段無しのの改札になっていたので、その対比で暗闇から出てくる、という描写を対比にして暗闇の無感情の中で生きてきた凛太郎が、地上に出る事で明るい所に出ながら暗がりの人間、という事を表したかったのではないか?と思うんですね。
それと上にも書いた「優しさが見える」については、実際に声の演技でも申し訳なさそうに言葉を紡いでましたね。
アニメで見ると凛太郎の外見上の怖さは結構描写されていたので、その分ギャップで凛太郎の普通にしていたら見えにくそうな人の良さが現れていたとも思います。
ハンカチを落として拾ってもらっても使いたくないからと突っぱねる桔梗2人
「お嬢様はバカなんかとは関わりたくないって」ここで千鳥と桔梗の隣り合わせのカットが出る。この台詞を頭が良い朔が言っている事に、千鳥を守る気持ちと桔梗への諦め(こちらは凛太郎の無関心というよりは攻撃的?)が朔なりに見える。
ここはアニメでは、すれ違いざまに桔梗の生徒2人が下を向くという動作が追加されてましたね。この回における「下を向く」は拒絶などのネガティブな意味合いを持つので、正に千鳥を嫌っている桔梗の象徴的な部分が現れているかと思います。
にしたって拒絶度合いが凄いようにも感じますけども…ここで凛太郎の無感情ぶりと朔のちょっと毒舌気味な部分の対比を描くのは面白いですよね。
「俺らに対してはお嬢様のカケラもない」「卒業したら一生関係ない人種だしな」最早「人種」と言ってる時点で凛太郎からしたら異星人のように桔梗は見えているかもしれない。→これも一種の凛太郎が貼っている「桔梗へのレッテル」への伏線
実家がケーキ屋である事を友達に言った事がない→最初はここから凛太郎の負のレッテルが始まっているから
ここの「人種」のくだりのについては、凛太郎の無感情さを象徴する場面なんですよね。基本関わらないこと前提といいますか。
で、ここの桔梗と千鳥のくだりなんですけど、桔梗がピアノ、千鳥が如何にもアホそうなBGMで結構音楽での対比が強いのが面白いんですね。
ピアノのイメージは冒頭の合唱でついているのでらしいな、とは思うんですけども。そこからの侮蔑の目のカットインとガラス破壊ですから、どれだけ桔梗は千鳥を嫌っているんだ…というのがアニメで見ていて強調されているのが良かったです。
そのガラスと連想してなのか、桔梗のカーテンがかかった校舎が遠ざかる時にピンボケして、そしてガラスを通して千鳥の教室に入っていく、という千鳥から見ても桔梗の存在が、レッテルでぼやけて見える、というのを強調している演出も、地味ながら良かったと思います。
2人席のテーブルいっぱいにケーキの皿を並べて完食している薫子→リスのような口と小ささから「中学生」と凛太郎から思われても不思議ではない。ここでもレッテルは見えているのと、薫子の芯の強さとのギャップを狙っている。
とはいえ、ここで好きな人にいきなり声をかけられたものだから、吹き出しがギザギザして荒くなっている。髪こそウェーブがかかっているけれども服装はラフで驚いたはずみで逃げ出している、正に薫子としては「最悪な再会の仕方」
薫子的にはその驚きがあるけれども、凛太郎からは「またビビられたから逃げられた」と勘違いしているので、薫子の想いは気づかない仕様となっている。これがあるから上に書いたような薫子の後のギャップが響く。
ここの薫子の描写の一挙手一投足が、アニメで見てると本当に可愛くてですね…初っ端から動く薫子の可愛さ全開というのが出ていましたね。
そして店のドアを閉める描写を見せる事で、凛太郎から見ての「拒絶」を強調されているように見えて印象に残りました。「ありがとうございました」を言う前に店を出られているので。
ここから外越しに店の中を映す描写がしばらく出てくるのですが、多分凛太郎と薫子の少し壁を感じるようなぎくしゃく感を演出したかったのかな、と思っています。声も終始ここでは緊張気味なので。
そしてこのタイミングで杏子が登場するわけですけど、声優さんが日笠陽子さんという事で、普通に実年齢よりも若い方の登板となりましたね。(杏子が46歳、日笠さんが今年で40歳)
とはいえ外見の「若すぎない年相応な感じ」は出しつつ、でも声はサバサバしたような引っ張って行くような感じがある、というのは出ていて良い配役だったと思います。
ケーキに燃えてる時の声なんか、演出もあって妙な前向きさで好感持てますし。
凛太郎は自己評価が低いので周りからの思いには気づきづらい。「あんた何でも自分のせいにし過ぎよ」
学校で悩んでいて翔平から「オレらの出番?」と言われても何も話そうとしない→この反応を絢斗が見ていてその変化を気づく事になる
「トラウマになってたらどうしよう、あの子」謝りに行こうとしていたのもあって優しいのはあるが、杏子に言われても自分のせい感が抜けていない
この時の凛太郎は結構色々な事を諦めている故に無感情となっているので、人に自分の本心を隠す事が当たり前になっているんですよね。
凛太郎に限らず、このアニメのキャラは何か起こった時に他人のせいに一切せずに、自分のせいと強く思ってしまう優しい気持ちを持っているのが殆どなんですけど、凛太郎はそれが他人から良い評価を受けてなかったから、それが顕著になっているというのがキツイといいますか…
だからこそ、遠景に凛太郎と千鳥3人の間にバッグで壁を作っているという芸コマは流石の演出だと思いました。
後日、店に居なくともオシャレをした上で凛太郎を杏子伝いに呼ぶ薫子→逃げてしまった事と「最悪の再会」になった事を1つの勇気で変えようとしている。→なので自分がケーキを食べる事無く奢るという妙な事になる。ちょっと焦っている?
でもケーキを前によだれが抑えきれない可愛さ。そこで譲る凛太郎も優しさが見える
家まで我慢できなくてケーキをバク食いしていた可愛いポイント
薫子がこの時点で凛太郎を同い年と知っていて敬語で話していた理由は、一応後で「ケーキ屋の一客だから」としていたが、この時点で薫子の方もかなり凛太郎に遠慮している節はある。これ以上望むのは贅沢だと一歩引いている?
敬語については多分3話位で劇中でも話題に上ると思いますが、ここの薫子の遠慮はアニメで見ると「勇気」ともイコールになってるんだなと分かるんですね。
というのも、ここの「おごります!」に限らず、凛太郎に対して何か行動を起こそうとする時に即座に言うのではなくて必ず間があるんですよ。最初は凛太郎が気まずくなりそうな空気感と言いますか。
それと薫子が待つ時に止まっている足元を見せる所は後々の演出で効いてきますし、自分の手を握った後の薫子が最初の「勇気」と考えると感慨深い物があるんですね。
それほど凛太郎に遠慮をする中で自分の気持ちを伝えたい!という「勇気」が薫子に行動を起こさせている、というのが分かるのでそれだけで最初の薫子への解像度が上がるという物でした。
ケーキを前にしたよだれのデフォルメ絵の可愛さ、涙を流しながら食べている可愛さもアニメならではでしたし。(花の咲き方がかわいらしく)
ちなみに凛太郎と薫子が「おごります!」の後に対面している時の原作の効果音が「ちゃーーん」なんですけど、アニメだとこういうちょっとオシャレな音になるんだな、と感じたのはアニメならではの発見だった気がします。「カラン」みたいな。
「やっと知れたー…」通い続けて名前まで辿り着かなかった薫子の勇気が実った瞬間。その時点で「凛太郎くん」と名前呼びなのが強さを感じる。
「男の人にあんなにじっと見られたの初めてで、ドキドキしただけ…です」これもずっと凛太郎を最初の出会い以外では遠くから見ていたからこその経験。凛太郎の「今まであってきた人と薫子の違い」を端的に示した言葉でもある。「わかんねー」
ここの描写、ケーキだけでなくコーヒーのティーカップもアニメではセットになっていて、薫子の「違くて」の声の震え具合からも分かる通り、薫子が上のセリフをつぶやく時に手を少し遊ばせている所にいじらしさを感じられますし(名前を聞く時に間があるのもまた良し)、
凛太郎の場合はコーヒーがある事で、コーヒー越しに自分の金髪&ピアスを見つめ直し(ここで影がついているのもポイント)、昔良い風に言われなかった事を回想し、
顔を上げると薫子のドキドキした表情が映し出される、という事で驚きも含めての「わかんねー」に説得力を持たせているこの演出が素晴らしかったですね。
ここでちゃんと「顔を上げる」という動作が鍵になっているのが明確になっていましたし。
それと、「知れた」というキーワードは、2話に向けて覚えておくと、話が分かりやすいと思います。
夜道の中で送ろうとした凛太郎を薫子が「大丈夫」と返すのは、凛太郎の優しさと薫子の一歩引いた姿が見える。
「凛太郎くんを”怖い”って思ったこと一度もなかったですよ?」「信じてくださいね」とニーっとする破壊力。真正面から「そう思った事ない」と言われたらそれは嬉しいような困惑するような表情に、二階の自室に戻りながらなるというのはある。今までと全く違う反応。
ここの薫子の台詞の前にも間があって、薫子がそれなりの距離を歩いてから話していたので、ここで自分の気持ちを伝える、という勇気があったのが分かるのが良いですね。
これは間違いなく、これまで凛太郎が言われた事がなかった事だと思うので。
後ここで独自の回想シーンが追加されていて、「否定的なことしか」の回想のモブの「似合わないね」の顔が影に消えるシルエットのようになっていて見えない描写があるんですよ。
このシーン、原作では普通に顔が見えてるんですけど、ここではさながらサスペンスアニメにでも出てきそうなシルエットの人物として描かれているのがかなり凛太郎が幼少期傷ついたのが分かるようになってるのが悲壮感が凄いんですよね。(その前にこのモブの顔は出てはいるので、凛太郎の心境の暗さを強調しているとも言えます)
その影に怯えるように机に突っ伏している凛太郎の描写の中で、その影が生まれては消えているので尚更です。
先程翔平達に絡んでいた不良が凛太郎の当てつけにわざわざ薫子に絡みに来る。
「あいつ怖いって有名だよ?」後輩が恐怖心を抱かれたからと、同調感覚で薫子にも噂を言っているワル。作中ではこの周りの連中くらいしか悪いやつらはいないので尚の事悪辣さに拍車がかかっている
ここで凛太郎が「仕方ねぇか」で済ませているのが諦めの境地を見たような気がしました。要は傷ついていないんですよね。
「どうしてただの噂だけで人を決めつけられるんですか?」
震えていた手を握りしめて「ならせめて知ろうともしないのに好き勝手言うのはやめて頂けますか?」「不愉快です」「知る」という言葉を使った薫子の芯の強さと、これも薫子の勇気の1つだと思う。凛太郎の笑顔を思い浮かべて、一つでも凛太郎の「負のレッテル」を否定しようとしてくれている姿…
薫子を助ける時の反動で壁に頭をぶつけた事を「薫子を信じる事が出来なかった自分への罰」としている時点で、凛太郎の自己評価が低すぎる所以でもある。
ここの薫子の声が終始震えているのが、これも勇気を振り絞って紡いだ言葉なんだな…というのを強く感じられましたし(凛太郎に「ドキドキしただけ」と言った時には目が泳いでいて、ここの「不愉快です」の時は泳いでいないのも、薫子の心境が見える様でした)、
この後の凛太郎も「できましたか?」も威嚇しているようではなく、外見に反してちゃんと震えているのが、薫子の為に動いた、という凛太郎の感情の出し方に説得力を持たせていて良かったと思います。
そして薫子が絡まれている場所が店の閉まっているシャッター前に変更されているので、凛太郎が頭をぶつける場所が壁からシャッターに変更されているんですね。
これは単純にコンクリートの壁だと危ない、というのもあったと思うんですけど、壁と違ってシャッターは開ける事ができるからこそ、千鳥と桔梗の関係性、凛太郎と薫子の関係性が切り開かれる契機になる描写として見せたかったのではないか、とも思うんですね。
凛太郎の中での「罰」として、開けられるはずのシャッターを開けなかった(ここの場合は薫子に怖い思いをさせた、信じ切れなかった事)と考えればそこも納得が行きますし。
「こんな優しい人に怖い思いをさせた」手が震えていた事からも見えた事。薫子の凄い所は自分の好きな人のため、という下心なしで「凛太郎を真っすぐ見る優しさ」で動けるという所。「助けてくれてありがとう」と笑顔。多分ここでハンカチを使っているのは、ハンカチを捨てた桔梗女子生徒2人との対比
ここでの「怖い思いをさせた」の時に回想しているのが、「不愉快です」の薫子の真っすぐな目、というのが、薫子の芯の強さを「優しさ」と凛太郎が形容している、というのが分かる演出も良かったですね。
そして額を拭く時、「ありがとう」と言っている時、アニメでは薫子はかかとを上げて背伸びしているんですよね。
これは凛太郎への歩み寄りでもありますし、これによって下を向いて謝っていた凛太郎の「顔を上げる」事にも繋がる(しかも「ありがとう」という直接の感謝の気持ちを正面から受けている)わけですから、このシーンが凛太郎の薫子が「救いになっている」というのが分かるのが素晴らしいと思ったわけです。
桔梗生徒が「顔を下にしてハンカチを捨てるように言った」のとは正に反対の描写となっています。
「評価なんて期待してなかった 諦めてたのに欲が出ちまいそうになる」これも凛太郎に対して遠慮気味な薫子との同質
ここでの回想シーンは左に凛太郎、右にモブの人物を配置した上でそれを2つのボックスで隔絶させつつ離れる事で相容れない、期待していないのを強調しているのがこれも凛太郎の一部分だと示されているようでした。
だからこそ、かかとを上げて凛太郎に向き合ってくれた薫子の、凛太郎の中での特異さが強調されているのが演出としていいと思ったわけです。
「今度は一緒に食べましょうね、ケーキ!」後に桔梗の子と分かる前に「レッテルに囚われる事無く「一緒に何かをする」という事をしようとする」薫子の真っすぐさが笑顔と共に見えている
ここで薫子を守るために凛太郎に肩を抱かれた事を意識しているのもまた、ちょっとした下心のようなものが出ていて良い
ここでの薫子も「間を空けて一歩踏み出している」という段階を踏んでいる事で、これまた薫子の凛太郎と少しでも接点を作ろうとする「勇気」が見られて、この勇気の連続で最初の凛太郎と薫子の出会いは成り立っていたんだな、というのが分かって、薫子の初期の人間臭さが出ていたようにも思いました。
これが薫子が「階段でないまっ平な道」の改札前で、雑多居るモブの人々の間に挟まれながらも、その中で一歩踏み出す薫子、という演出ですから、それまでの足の演出もあって凛太郎への薫子からの歩み寄り、という点では最初の一歩と言えるのではないでしょうか。
抱かれた肩を押さえていた、というアニオリ描写も駅のホームの中で光っていたと思いますし。
桔梗の向こうに薫子が見えた時に咄嗟に千鳥サイドからカーテンを閉めてしまった凛太郎。壁を作ってしまった証拠。ある種異星人として見ていたからこその驚きと反射的な壁。
薫子が驚いていたのは同じく千鳥に凛太郎がいたからだけど…全然意味合いが凛太郎と違うと分かるのはまた後の話。
1話の引きであり、タイトルの「凛太郎と薫子」が輝くここのシーンですが、「寝付けなかった」といっていた凛太郎が学校内で目を瞑った時に「ありがとう」と言う薫子が映っているというのが、薫子の事が凛太郎の頭から離れていないというのを感じられて、恋愛軸としてニヤニヤできる所ではありました。
そこからの凛太郎の中での「落差」になっている「和栗さんが桔梗の生徒だった」という事実が出てくるわけですけども…
後カーテンを閉める時の「…ぷはぁ!」の凛太郎の息遣いについては、驚きで息をするのも忘れていた、という凛太郎の心境の切実さが見られて良かったと思います。
というわけで薫子の遠慮がありながらの「勇気」が、間違いなく凛太郎に真っすぐ届いて、凛太郎が変わる契機になっていく、というのが演出からの強く感じられた1話でした。
黒木監督の事を別に侮っていたわけではないのですが、まさかここまで凄いアニオリでの演出のプラスを作ってくれるとは…という気持ちにさせてくれました。素晴らしかったと思います。
初回ながらOPとEDが映像付きで放送された、というのも個人的には嬉しい所でした。1話だとこれを省略するケースが本当に多いので。
ちなみに他のクレジットですけど、塚田先生の名前「慎」っていうんですね。確か名前は出て来てなかったと思いますから、このクレジットで名前を知る事ができたのは1つ発見だったかもしれないです。
それとちょこちょこ端役で出ている大塚さんは、今後何か関わる事になるのでしょうか…?
というわけで次回は2話、先行映像でも出ていた薫子の満面の笑顔がラストに来るであろう所まで、どう話を持って行くか、ですね。一度見てはいますが楽しみにしたいと思います。
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