さて、とうとう「薫る花」のアニメも最終回を迎える事となりました。
思えば9月のファーストPVに沸き立ち、3月のメインキャスト発表等で概要を知り、そこから半年ずっと「薫る花」中心にブログ運営を進めてきたので、この後統括記事を書くとはいえ、ここで一旦は一区切りになるのは寂しくはあります。(負担としては相当ありましたけども…)
それでも最終回ですから、
それでは続きから感想です!
(引用動画サムネURL:https://youtu.be/i5_w0CiLjnI?si=VQ1djsFPDY-bgoPD)
思えば9月のファーストPVに沸き立ち、3月のメインキャスト発表等で概要を知り、そこから半年ずっと「薫る花」中心にブログ運営を進めてきたので、この後統括記事を書くとはいえ、ここで一旦は一区切りになるのは寂しくはあります。(負担としては相当ありましたけども…)
それでも最終回ですから、
それでは続きから感想です!
(引用動画サムネURL:https://youtu.be/i5_w0CiLjnI?si=VQ1djsFPDY-bgoPD)
第13話(最終回)「薫子と凛太郎」
脚本:山崎莉乃/絵コンテ,演出:黒木美幸,加藤誠/作画監督:山口智,川上大志,田中将賀,なぎやま,他10名
原作範囲内:37話「夏祭り」38話「凛太郎の想い」39話「告白」40話「薫子と凛太郎」
夏祭りの中彩られた2人の告白…1つの始まりが描かれた最終回だったと思います。
という、結構異色づくめの最終回でしたね。メインキャストは凛太郎と薫子のみ、OPとEDを流す事なくファーストPVで聴かれた「ひとひら」がEDとして流れると。
現状2期の話はなく、ED映像だけで大分補完はされているので十分といえばそうなのですが、このED映像の中で千鳥と桔梗が交わる姿を、凛太郎と薫子以外で見る事ができるかどうか…という感じですね。
絵的には結構原作通り構図は進んだので、もうアニメでは補強レベルにとどまっていたのが、この時の原作の凄さを物語っている気がしました。
なので感想記事としては声などに細かな演出に注目して見ていくことになりそうです。
そしてスタッフ面では、黒木監督と加藤さんの連名コンテ演出、という事で、「明日ちゃん」最終回の黒木監督、都築さんの連名のようにこのアニメを支えてくれた演出家2人による演出、という意味では感慨深い物があるという物でした。加藤さんは6話の初登板から演出育成監督と、相当貢献は大きかったと思いますし。(ちなみにシリーズ演出の都築さんは2原での参加)
作監には准監督の山口さんが4回目の登板(インタビューでも後半は作監にシフトするという話がありました)、「WIND BREAKER」のキャラデザである川上さんも3回目の登板と入ってくれたりと貢献度は高かったと思います。
そして「あの花」等のCloverWorks制作の長井監督×岡田脚本作品(いわゆる「超平和バスターズ」制作)、新海監督作品のキャラデザを担当された田中将賀さんも参加という事で、作監人数こそ多いですが豪華な布陣で固めてくれたのは嬉しい限りでした。
それでは名残惜しいですが、原作メモとアニメ感想の並行に入ります。
周りが祭りの熱気に包まれる中1人静かに待つ凛太郎。その凛太郎を見つけて手鏡で笑顔の練習をして合流する薫子。賑やかなはずなのにそこには2人だけの空間が広がっていて…という雰囲気作りが、薫子が凛太郎を呼ぶ時の息遣いや、全体的に敬語が多めになっている所から伝わってくる。
残念ながら手鏡のシーンはカットにはなりましたけど、この辺りは「薫子と凛太郎」部分を極力流す為の尺調整の意味合いはあったと思いますね。
恐らく「薫子と凛太郎」部分以外は黒木監督のパートだと思うので、この薫子の一歩踏み出す様を足元で見せた所は、1話と通じる所があって印象深いなとは思いました。
楽しむ人達の声が聴こえる中で待ち合わせの会話をする2人。お互い見つめる中で…
「…きっと、今日は一生忘れられない一日になる」
この部分を電話の回想よりも前に持ってきた辺りは、区切りの面でも夏祭りまでの雰囲気の描写の面でも正解だったと思います。
水族館デートの時に周りに人がいながらも、2人だけの空間を作っていた状況と同じなので、デートの空間としては最高の物になっていたと思いますし。
告白を改めてする事を伝える為に電話をかける凛太郎。ここで凛太郎の方から電話をかけるのが初めて、となったのが、これまで薫子がどれだけ凛太郎に感情を伝え続けてきたか、というのが分かる。
と、同時にその最初のきっかけが「薫子に迷惑をかけたまま終わるわけにはいかない」という凛太郎の薫子への優しさから来ているというのが、ここまでの薫子への凛太郎の気持ちが詰まっていると思う。好きな人への男気。
長く感じるコール音。薫子が出る時はかなり早いタイミングで出ていた分そう思う。薫子の緊張度合い。
ここのコールの時間の長さは、アニメならではの間の持たせ方だなと思いましたし、薫子が電話に出た時に寄りかかっていたフェンスから離れる辺りは、凛太郎が昔の諦めていた自分に寄りかかっていた所からの脱出、という意味で成長した部分だなと感じました。
そして先程出てきた待ち合わせでは、珍しく薫子よりも先に来ている凛太郎と。ここにきて凛太郎の方のアプローチが、先に告白をしたからこそ前に出ているのは、凛太郎の積極性の賜物のように思えて良かった所です。
花火の楽しかった事の共有、困らせてしまった事への謝罪、そして「もう一度会ってその話をしたいんだ」と「導入→本題の前置き→本題」と完璧な流れで凛太郎の気持ちを薫子に律義に伝える様は、昴に薫子とどうやったら会ってくれるか、千鳥3人を薫子と昴に紹介したい、と話した時のような凛太郎の性格が出ている。
ここで薫子の口から出てくるのが「夏祭り、二人で行きたいです」「…だ…だめ…ですか…?」と最初期のような敬語なのが、振り絞った薫子の中の「凛太郎との夏祭りを過ごす」という希望を、遠慮気味ながら出しているという、薫子なりの欲張りを綺麗に描写している事に繋がっている。このお互いが希望を出しても全く自分よがりにならないのが、凛太郎と薫子の関係性の凄い所。
「時間作ってもらっても」の所で車が走り抜けていたのは、薫子の「初恋は走り出した」と同じ要領でしょうね。光が一瞬で通り過ぎていく、ある種青春の1ページを見たと言いますか。
凛太郎なりに勇気を出して言った言葉、というのが目に見えて分かった場面だったとは思います。
お互い緊張している夏祭りの待ち合わせの中の薫子の「おなか空いてない!?」は、スポーツ大会のハイタッチの時の「元気がない時はいっぱい食べるといいよ!」と同じ薫子なりのロジカル。
それを凛太郎も分かって「気を遣わせてしまった…」となるのが、あの頃と比べて薫子への接してきた時間が長くなってきた証拠。
そしてあの時のように、りんご飴のかけらを取ろうとしてわたわたしている薫子を見て笑う凛太郎というのは、接した時間は長いけれども、その薫子の天真爛漫さに惹かれた事はその時から変わらない、というのを示している。
「やっぱり、和栗さんが笑ってるとこ好きだな」自分本位ではなく相手の幸せの笑顔を愛おしく思う様が「愛」
凛太郎に声をかけられた時の「はい!?」は緊張しているのに、「おなか空いてない!?」で一気にナチュラルになる薫子の凄さは、声の演技で尚の事感じられたのは良かったです。こういう決める所では確実に相手に寄り添えるという事なので。
そしてりんご飴のかけらの部分まで初期の頃のようなテンション低めの演技をしていた凛太郎も、ここで一気に緊張が解けて元に戻ると。この辺りも凛太郎の成長が感じられて良い所でした。
しがらみなく夏祭りを堪能する2人。ここの凛太郎が射的で当てて、薫子にあげたうさぎのぬいぐるみは、原作が進んだ今でも薫子の部屋に大切にとってある。(ぐぬぬ顔の隣の男の子の顔が…)
そうやって楽しんで、急に告白の事を思い出して気まずくなる2人。その前に楽しんでいた気持ちが素直な気持ち、気まずいこの空気感が「告白」というキーワードが間にあるからこその、ある種「千鳥と桔梗」みたいな線引き。
でもそれを超える為にこうして場を作ってもらった事に、凛太郎は決意を固めて告白。この男らしさが器の大きさを物語っている。
薫子も緊張はしながらも、凛太郎に気を遣わせないように表情を緩めて「はい」という所に、薫子からの凛太郎の「愛」を感じる。細かな表情の変化、シチュエーションでも感情が伝わる大ゴマの使い方の上手さ。
撮影技術のエフェクトの贅沢さから始まり、ひたすら祭拍子に合わせて夏祭りを堪能する姿を描くその様は演出として凄くオシャレでしたね。夏祭りの雰囲気を感じつつも、2人の楽しそうな姿にほっこりする、というような。
そこから「どこかで座って休む?」のアニオリ部分は、ちゃんと薫子の草履を確認した上で凛太郎が休む事を改めて提案した辺りは、薫子のこれまで歩を進めてきた凛太郎への想いに凛太郎自身が応える、というメタ的な見方もできて、これまた凛太郎の成長が見えたような気がしました。
ここまで本当に薫子目線からしたら色々な凛太郎への想いを抱えてきた事ですから。
そこから街のカットが出て来てから並んでいるラムネのカットが映ったのは、その後のラムネのカットをここでも補完している感じがしましたね。遠くにある千鳥も桔梗も関係ない「街」の中で「二人は出会って隣にいる」というのも、ここで強調されていたように思います。
そして手が震えながらの薫子の「はい」ですけど、もう少し声のトーンは凛としてるかな、と原作を見ていた時は思っていたのですが、緊張からかテンション低めになっていたのが印象的でした。
やはりそこは薫子も凛太郎から伝えられる想いに、ネガティブな気持ちはないにしても、未知数過ぎて向き合う事への緊張が勝り過ぎていた部分はあったのかな、とは思わされたそんな演技だったと思います。
学校の事でも迷惑をかけたくなかった。笑顔が見られれば今のままでよかった。
それでも薫子との時間が終わってしまうのがすごく寂しくなって、付き合う人達はみんなこんな気持ちだったのかなと思ったら、思わず言葉が零れて…という、凛太郎が「好きです」と言葉にした理由の説明。ただ過ぎる時間をもって過ごしていた凛太郎が、身近にいる人たちのお陰で人と同じ感覚で物事を見る事ができた、という成長の証でもある。
このロトスコープ的見せ方も、1話の凛太郎の回想を思わせる形でドラマチックなんですよね。どれだけここまでの凛太郎が薫子を見てきたか、という話ですよ。
でもその次に出る言葉が、桔梗と薫子のしがらみが脳裏をよぎっての「我儘」「欲張り」「戸惑い」「自分勝手」というネガティブな言葉が、薫子の事を深く考えている故の自分への罪の意識のようなものを感じる。これはある種凛太郎に「薫子に会わないで欲しい」と言った昴とも重なる所がある。
でもその時に「ごめん、できない」と言った凛太郎はその言葉の意味を、「好きです」と気持ちが零れた事で知る事ができた。
「付き合うということが勇気や元気をくれる大切な人と、たくさん一緒にいられるものだとしたら、俺はそうなりたい」
「和栗さんと、もっと一緒にいたい」
「俺と、付き合ってください」
あれだけ悩んでいた「付き合う」という事の明文化が完璧な上に、紡がれている言葉の「勇気や元気をくれる大切な人」と薫子を形容している、凛太郎の「愛」が伝わる要素もある。
かつ「一緒にいたい」と感情の中で思っている事をストレートに言ってくれる、薫子からもらったその芯の強さ。
正に「全てを兼ね備えた」見事な告白だったと思う。
ここで改めて見えたラムネの瓶の並び、というのは、「2人の思い出を形にする」という意味合いはあったように思いますね。それこそアニオリで前回の話で使用済の花火が映し出されていたのと同じ理論だと思っています。
その後に吹く風の描写、薫子の髪飾りの花が揺れる描写は、この時点で2話の描写と重ねている部分はあったのかなと思いました。もうここから「2人の関係は動き出していた」というような。
薫子が凛太郎の「無償の愛」に救われていたという話。ここでの薫子の感覚はかなり独特な物となっている。好きになったきっかけとして主人公が覚えていない中で格好良いムーブをしたから、というのは凄いベタな展開ではあるものの、その「覚えていない」というのが嬉しい、と言っていたので。
何故なら自分にとって特別な出来事である「優しさ」を、凛太郎は1つ1つ覚えていない位自然と当たり前にする事ができるから。それほど優しい人だから、というのが聡明な薫子が考える「優しさの受け取り方」の秀逸さが見えたような気がした。
確かに色眼鏡で助けた、なら下心がかなり見えるけれども、その真逆を行ったという事は、分け隔てなく人に気持ちを向ける事ができる、という事なので、正に「千鳥と桔梗」の話にも繋がる部分になっているのが、テーマとの繋げ方としても上手いと思った次第。
薫子の1話でしていた事は、その凛太郎の優しさの「お礼」をしていたと考えると面白い。
「救われた」の所で足元を見せるのは、薫子自身あの時の凛太郎との出会いが救いとなった、というのを示したかったのはあると思います。
そして同じ構図を重ねて回想に入るこのカットインの仕方は間違いなく黒木監督の特徴の1つでしょうね。
出会ったシチュエーションは辛い事(この詳細は2クール目が放送されたら明かされる)が続いて傘もささない中で雪の中歩いていた時に、ケーキも食べる気にならない状態だったけれども、温かい雰囲気に惹かれて中に入った事が始まり。
そしてケーキの味も温かさが詰まったもので泣いてしまったと。「心を温かくなるようなケーキ」と凛太郎が作ったケーキについて感想を述べていたけれども、それはそのまま圭一郎から受け継いだ凛太郎の「味」なんだろうな、と思うと、薫子の「知りたい」は心の部分だったんだなというのを改めて思う。
ちなみにその「苦しくなるほど嬉しかった」と称する、薫子の涙を励ました凛太郎の言葉は今現在でも明かされていない。
ここで印象的だったのは、原作だとケーキ屋に辿り着くまでが右から左だったのが、アニメでは左から右にリバースしていた事なんですよ。
そしてドアを開ける時の向きも左から右と。これはアニメ演出的に左から右に進む事は好転の証なのでそこに当てはめたのかなとは思います。
OP映像だと凛太郎は右から左に走っていますけど、それはOPED映像の感想でも書いたように、左から右に進んでいる飛行機雲ごと傘を掴もうとしていたという意図があったと思うので、ここではストレートに行ったという事でしょう。
そしてここの傘もマフラーもしていない状態の薫子、というのはある種「もうどうでもいい」という投げやりの気持ちもあったと思うんですよ。そこから救われたのであれば…という納得感はあったと思います。
後は薫子の「覚えてないでしょ?」も普段のトーンと違って少し抑え目になっている分、少し悪戯っ子が大人になった感じをおぼえて、演技の幅としても良いなと思った所でした。
「私たちは学校とは関係ない場所で出会って、勇気や元気をくれたそんなあなたに、私は恋をしたの」
凛太郎の告白の薫子評である「勇気や元気をくれる大切な人」をそのまま返し、その「無償の愛」を学校関係での迷惑のカウンターとして返す…この台詞が「凛太郎がしてくれた事のお礼兼告白」になっている所に、薫子と凛太郎の気持ちが同じである、ということを示している。
前回からベンチで飲んだラムネが並んでいる描写がでているけれども、これは立場が違う2人が、思い出を共有して今隣にいる、という事を夏祭りの象徴の一つとして置いている、と考えられる。
そしてここから最終的な告白の返事の前に「薫子と凛太郎」の回想が入るのは、返事を最後の締めにしたかったんだろうな、というのが伝わってきた所です。いつもはカットされそうなモノローグもここではほぼカットされずに収録されていたので。
「そこに行く時はいつもより、丁寧にメイクをして、買ったばかりの服を身にまとって、失敗しないように慎重に髪を巻いてた。
鏡の前でチェックをしたら、わくわくしながら家の扉を開ける。
“また彼と話せるかも”なんて淡い期待に胸を躍らせて」
1つ、恋心を示す紫色の模様が小さく彩られる中始まった回想ですけど、ここを丁寧に描いた事で既に乙女心全開、というのが薫子の様子も相まって見られたのは良かった所です。
ドアを開ける時の構図は左から右に、そこから後ろ姿ではありますがスキップしながらケーキ屋に向かう薫子の可愛さをもうすでに感じられた所ではあったので。
最初は薫子の乙女心を外見のスタイリングの部分から凛太郎に会うために気合を入れていることが分かる。その後で「最初に会った時しかレジにいなかった」と判明している分尚更。(会える可能性が低いと分かっていてもオシャレをしていくいじらしさ)
ケーキ屋での杏子との会話で常連具合が分かる。「メニューを制覇しそうな勢い」もそうだし、杏子と仲良くなっているのもそう。
でも凛太郎が同じ学年と分かっていてもそれ以上踏み込む事ができない所が、まだ1話で見せてくれた「勇気」がまだ出ていないのが分かる。
ここの「しゅん」の時の落ち込み具合は結構可愛さが伴っているので多少余裕はあるんですよね。
でもここで食べるのではなく「持ち帰り」な事、凛太郎に関して声をかけなかった時は右から左の構図になっていた事からして、構図で勇気が出ていない事を示す事も出来ていたと思います。
デフォルメにする事で深刻さを打ち消しているのもまた良いと思った所です。
この後も厨房では見かけても話しかけるタイミングを見つけられない状態が続いていたので、恐らく凛太郎の「諦める」という当時は当然のように持っていた感覚に、薫子もなっていたのをオーバーラップさせていると思われる。「抱いていた淡い期待は、その頃には諦めに変わり始めていた」
ここで凛太郎の「名前」を知りたがっていたのは、杏子とは何回も話していたからこそ、「その人固有のものである”名前”」を知りたかったというのはある。正に「その人を知りたい」という感覚。
ここ、1話で走って逃げた時と同じ構図にしているのは、結構ネガティブな意味合いもあったと思いますし、正面にケーキ屋を見ているという構図を続けながら、でも最後はケーキ屋の外にまで追いやられているように感じたのは、どんどん気持ちが遠くなっていく様を示していたと思います。
紫の模様についても徐々にしぼんでいっていたように見えたので。
後薫子の台詞が「放課後に行った」ではなく「病院の面会」とはっきり言っている所に、2期の期待が出てしまうんですけどね…これが明かされるのが丁度2クール目の範囲内だったりするので。
そしてその諦めがオシャレも何もしていないタイミングで店に行ってしまい、ある種やけ食いのような形でケーキを食べたために、「オシャレも何もしてない子がケーキをバク食いしている図」を凛太郎に見せる事になってしまったと。正に1話の感想メモに書いた通り「薫子にとっての最悪の再会」となってしまったと。ある種諦める事の展開的な悪さを、前に進む事で良い方向に転ぶ事の逆説的な描き方で見せている。
しかも驚いて逃げるように店を飛び出してしまったので、上の諦めから来る負の連鎖はさらに続いていたと。「私のばか!」
でもその後悔から諦める事をしなかった事が、薫子と凛太郎の「本当の出会い」の始まり。オシャレをして、杏子に言う事の出来なかった「凛太郎に会いたい」という言葉を緊張の中で言ったと。正に最初の「最悪の再会」の真逆で掴み取った未来がここにはあった。
「知りたいの、あなたのこと。あなたの名前も知れないままなんて、いやなの」
でもその取っ掛かりとして「おごります!」が出てきたのは、緊張の中で糸口を作ろうとしていた、と考えると突飛でありながらいじらしくも思える。
ここの「今食べたいんです」の声の演技は、間違いなく空元気に聞こえたのは演技の方針が素晴らしいから感じられたのはあったと思います。ここで食べる事を決めた時点で動き出すものはあったとは思いますけど。
そこから一気に1話の構図に行くのが感慨深くもあり、驚く所は薫子視点になっていた所に最終回ならではの良さが見えていましたね。
「私のばか!」はちゃんと左から右に走っていたのと、紫の模様もここから一気に広がっていったところに、薫子の強い意思を感じた所でした。
そしてブラックアウトで「諦め」を示してから、オシャレする所で一気に自分の心と向き合う決意を固めて、ドアを開ける足元が映し出されると。ここは1話でも薫子の足元が映し出されてから凛太郎が薫子と対面しているので、そことの連動もあったように思います。
からの少し泣きそうになりながら「その人に会いに来たんです」の描写は、本当に薫子が勇気を出して凛太郎に近づこうとしたんだなと感じられて、感情移入できた所ではありました。
待っている間にガラス越し(多分ランプ?)に薫子を映すカットは4話で昴を映していた時と同じではあるので、恐らく黒木監督が重ねていた所だったと思うのですが、それも一瞬だったので「突き破った」部分を強調していたように思いました。
から、ここで右から左に凛太郎を見ていたのは、上でも書いた凛太郎が「右から左に走っていた理由」と同じでしょうね。自分からそれをつかみ取ろうとする気持ちの強さの表れ、というわけです。
そして翌日の桔梗の教室。朝早く自習をしていても肩を抱かれた事が頭から離れない薫子。
この勉強面でのストイックさと、凛太郎から来る感情に振り回されているこのギャップが薫子に感情移入できる所になっている。
そしてカーテンを開けたら凛太郎が千鳥の校舎に居ると。
「…もしかして凛太郎くんって、千鳥の生徒だったの!?」は凛太郎の反応とほぼ同じだけれども、凛太郎はそこから「千鳥の自分なんかと関わっても何も良い事はない」と後ろ向きになっていたのに対し…
「…どうしよう、うれしい。凛太郎くんが…こんな近くにいたなんて…!」
となるのが、そもそも千鳥と桔梗に隔たりを感じていない事を示しているし、寧ろ凛太郎を近くで感じる事ができる、という良い面に目が向いて「嬉しい」となっているので、これはなるべくして凛太郎の彼女になったんだな、という強い説得力が出ていた。
まず、凛太郎に肩を抱かれた所を回想しているシーンにて遠くに「消しきれていない黒板」が映し出されたのは、いけない事だと分かっていても恋心を止める事ができていない薫子の心情を上手く表していたと思います。
そこから2話冒頭で出てきて、原作の2話の扉絵ともなった「薫子がカーテンを開けるシーン」に繋がると。
凛太郎からしたら結構あっさり描かれていたこのシーンが、薫子からしたら恋心が完全に花開いた劇的なシーンに映っていた、というこの演出と構図の違いが、話数を積み重ねてから見ると感慨深さが増すように作られているのが、アニメならではの特権だよなと思わされた所でした。紫の模様が完全に広がったのも個々でしたしね。
それは薫子の声の演技も乙女心全開にもなりますよ。光が少し刺す中、並んでいる椅子の向こう側で薫子が座り込んでいる様は、千鳥と桔梗の関係性の意味合いからしたら小さな事でも、薫子にとっては凄く大きなことだったというのが示されていたと思います。
「こうして私の初恋は走り出した」
凛太郎への想いが「初恋」になったのはここからなのか、と考えると、接点を作って近くにいる事を知る事ができた喜びが爆発した、という事だろうか。
その後にしたのが「校門の前で待つ」だったので、舞い上がり方としては凄い事になっていた気はする。軽率とも思うが、千鳥と桔梗に隔たりを感じていない故の行動だったともいえる。
ここで回想は終わりと。いやはや劇的な薫子の回想だったと思います。
そして目と目が合う真正面に薫子は立って…
「私は和栗薫子です。そしてあなたは紬凛太郎くんです。千鳥と桔梗なんて関係ない。他でもないあなただから、私は知りたいと思ったの」
「気持ちを伝えてくれてありがとう。私でよければこちらこそよろしくお願いします」
「私も凛太郎くんが、大好きです!」
以前はできなかった感情をそのまま伝える、という事をしてくれた凛太郎に対する薫子の「最大の感謝」を今までしてきた、かつ凛太郎が大好きな「自分の笑顔」で返す、というのが、これも薫子の芯の強さを感じられる場面になっている。嬉しいという自分の気持ちよりも凛太郎の気持ちを優先したわけなので。
この告白の返事の薫子の表情の作画力は凄まじかったですし、2話の台詞を重ねる所はちゃんと2話と同じ空間の中で描いている、というのも演出力の凄さを物語っていたと思います。
アニメ版の「私も凛太郎くんが、大好きです!」を見れた事は、当時告白回に盛り上がった原作を見ていた頃が鮮明に蘇るような感覚になれた、という意味でも凄く大きかったと思います。それだけ気合が入っていたという事なので。
ちなみに35話から40話までは、「彼等の真っすぐさ何度も泣きながら描いた回」と三香見先生が6巻のカバーコメントで話しているんですよね。それはここまで気合が入ったものになるという物です。
そしてED前最後の〆は凛太郎のアニオリの台詞で。
「勇気を出して良かった。
隣の校舎はカーテンの向こう側。俺には一生関係ないと思っていた世界から、思いっきり手を振ってくれたあなたの事を、知る事ができたから」
思いっきり手を振ってくれたのはアニオリ準拠ですけど、薫子の無邪気かつ凛太郎の事を真っ直ぐに見てくれるその様を凛太郎は好きになったんだろうな、と思うと凄く心に来るものがありますし、
この2話の薫子の笑顔から僕の「薫る花」との関わりが始まった事を考えると、〆がこの台詞で良かったなと心から思います。「知る事」という言葉も正に「薫る花」を象徴する言葉でしたから。
そして足元を見せた上でこれもまた右から左に進んでいるカットですから、ここも徹底されていたなと感じた所でした。
そしてそこから流れるのがやっとこさお披露目のファーストPVの曲である「ひとひら」ですね、
このアニメは「ひとひら」に始まり「ひとひら」で終わったと考えるとこれ以上ない構成だったなと思わされます。一応今回流れたバージョンはテレビバージョン、という事で、円盤の特典でCD化待ってます。
特殊EDの映像は一枚絵の数々。最初のカットは「告白の翌日」での電話のシーンでしょうね。
そこからの部分はカットされた「夏休みの過ごし方」からのサッカーシーンと勉強合宿のシーンの合わせでしょうね。補完としては非常に上手なカットだったと思います。
そしてケーキ屋を手伝う凛太郎、参考書を探す薫子と昴、勉強会の千鳥組ですね。日常のカットですけどそれだけで微笑ましくなる部分でした。翔平は相変わらず寝ているのか…とはなりましたけど(笑)
そこからは世界線的にはほぼ1年経っていると思うのですが、桔梗組6人のスイーツショップでの自撮りを千鳥組が見ている構図なんですよね。
勉強会自体が夏ではなかったのでケーキ屋を手伝う凛太郎のカットから夏は終わっていると思うのですが、スイーツショップでの服装が夏なのとこれがまどかによる自撮りなので、このカットは間違いなく1年後の夏だと思うんです。
まあ原作の現状の状態からして夏休み中の描写でしょうね。ここで未来が示唆された事で2期にもつなげやすくなっているのもまた、サービスカットとしては良く出来ていたと思います。
…まあアニメだけの人からしたらここのシーンでそこまで語る事はないとは思うのですが。後こうして見ると服装の趣味が同じだからか薫子とすずかの仲の良さが見えると言いますか。
そしてラストカットは制服姿の凛太郎と薫子が笑いながら向き合っているカットと。原作でも「カーテンの向こう側」の扉絵が凛太郎と薫子の制服姿での並び歩きでしたけど、それを彷彿とさせるような「千鳥と桔梗の交わりの一端」を見る事ができた良い〆だったと思います。
本格的な交わりについては2期が放送されたらそこで描かれると思いますのでそこをお楽しみにという事で…
というわけで心に深く刻まれた最高の「薫る花」のアニメ化でした!
詳しい事は後日統括記事にてざっくばらんに書いていく事になりますが、感想記事としてはここで締めとなります。
1年前のファーストPVから待ちわびたアニメ化がここまでの物になった事には感慨深い気持ちでいっぱいです。
このアニメに携わった全てのスタッフの方に感謝申し上げます、本当にありがとうございました!!
脚本:山崎莉乃/絵コンテ,演出:黒木美幸,加藤誠/作画監督:山口智,川上大志,田中将賀,なぎやま,他10名
原作範囲内:37話「夏祭り」38話「凛太郎の想い」39話「告白」40話「薫子と凛太郎」
夏祭りの中彩られた2人の告白…1つの始まりが描かれた最終回だったと思います。
という、結構異色づくめの最終回でしたね。メインキャストは凛太郎と薫子のみ、OPとEDを流す事なくファーストPVで聴かれた「ひとひら」がEDとして流れると。
現状2期の話はなく、ED映像だけで大分補完はされているので十分といえばそうなのですが、このED映像の中で千鳥と桔梗が交わる姿を、凛太郎と薫子以外で見る事ができるかどうか…という感じですね。
絵的には結構原作通り構図は進んだので、もうアニメでは補強レベルにとどまっていたのが、この時の原作の凄さを物語っている気がしました。
なので感想記事としては声などに細かな演出に注目して見ていくことになりそうです。
そしてスタッフ面では、黒木監督と加藤さんの連名コンテ演出、という事で、「明日ちゃん」最終回の黒木監督、都築さんの連名のようにこのアニメを支えてくれた演出家2人による演出、という意味では感慨深い物があるという物でした。加藤さんは6話の初登板から演出育成監督と、相当貢献は大きかったと思いますし。(ちなみにシリーズ演出の都築さんは2原での参加)
作監には准監督の山口さんが4回目の登板(インタビューでも後半は作監にシフトするという話がありました)、「WIND BREAKER」のキャラデザである川上さんも3回目の登板と入ってくれたりと貢献度は高かったと思います。
そして「あの花」等のCloverWorks制作の長井監督×岡田脚本作品(いわゆる「超平和バスターズ」制作)、新海監督作品のキャラデザを担当された田中将賀さんも参加という事で、作監人数こそ多いですが豪華な布陣で固めてくれたのは嬉しい限りでした。
それでは名残惜しいですが、原作メモとアニメ感想の並行に入ります。
周りが祭りの熱気に包まれる中1人静かに待つ凛太郎。その凛太郎を見つけて手鏡で笑顔の練習をして合流する薫子。賑やかなはずなのにそこには2人だけの空間が広がっていて…という雰囲気作りが、薫子が凛太郎を呼ぶ時の息遣いや、全体的に敬語が多めになっている所から伝わってくる。
残念ながら手鏡のシーンはカットにはなりましたけど、この辺りは「薫子と凛太郎」部分を極力流す為の尺調整の意味合いはあったと思いますね。
恐らく「薫子と凛太郎」部分以外は黒木監督のパートだと思うので、この薫子の一歩踏み出す様を足元で見せた所は、1話と通じる所があって印象深いなとは思いました。
楽しむ人達の声が聴こえる中で待ち合わせの会話をする2人。お互い見つめる中で…
「…きっと、今日は一生忘れられない一日になる」
この部分を電話の回想よりも前に持ってきた辺りは、区切りの面でも夏祭りまでの雰囲気の描写の面でも正解だったと思います。
水族館デートの時に周りに人がいながらも、2人だけの空間を作っていた状況と同じなので、デートの空間としては最高の物になっていたと思いますし。
告白を改めてする事を伝える為に電話をかける凛太郎。ここで凛太郎の方から電話をかけるのが初めて、となったのが、これまで薫子がどれだけ凛太郎に感情を伝え続けてきたか、というのが分かる。
と、同時にその最初のきっかけが「薫子に迷惑をかけたまま終わるわけにはいかない」という凛太郎の薫子への優しさから来ているというのが、ここまでの薫子への凛太郎の気持ちが詰まっていると思う。好きな人への男気。
長く感じるコール音。薫子が出る時はかなり早いタイミングで出ていた分そう思う。薫子の緊張度合い。
ここのコールの時間の長さは、アニメならではの間の持たせ方だなと思いましたし、薫子が電話に出た時に寄りかかっていたフェンスから離れる辺りは、凛太郎が昔の諦めていた自分に寄りかかっていた所からの脱出、という意味で成長した部分だなと感じました。
そして先程出てきた待ち合わせでは、珍しく薫子よりも先に来ている凛太郎と。ここにきて凛太郎の方のアプローチが、先に告白をしたからこそ前に出ているのは、凛太郎の積極性の賜物のように思えて良かった所です。
花火の楽しかった事の共有、困らせてしまった事への謝罪、そして「もう一度会ってその話をしたいんだ」と「導入→本題の前置き→本題」と完璧な流れで凛太郎の気持ちを薫子に律義に伝える様は、昴に薫子とどうやったら会ってくれるか、千鳥3人を薫子と昴に紹介したい、と話した時のような凛太郎の性格が出ている。
ここで薫子の口から出てくるのが「夏祭り、二人で行きたいです」「…だ…だめ…ですか…?」と最初期のような敬語なのが、振り絞った薫子の中の「凛太郎との夏祭りを過ごす」という希望を、遠慮気味ながら出しているという、薫子なりの欲張りを綺麗に描写している事に繋がっている。このお互いが希望を出しても全く自分よがりにならないのが、凛太郎と薫子の関係性の凄い所。
「時間作ってもらっても」の所で車が走り抜けていたのは、薫子の「初恋は走り出した」と同じ要領でしょうね。光が一瞬で通り過ぎていく、ある種青春の1ページを見たと言いますか。
凛太郎なりに勇気を出して言った言葉、というのが目に見えて分かった場面だったとは思います。
お互い緊張している夏祭りの待ち合わせの中の薫子の「おなか空いてない!?」は、スポーツ大会のハイタッチの時の「元気がない時はいっぱい食べるといいよ!」と同じ薫子なりのロジカル。
それを凛太郎も分かって「気を遣わせてしまった…」となるのが、あの頃と比べて薫子への接してきた時間が長くなってきた証拠。
そしてあの時のように、りんご飴のかけらを取ろうとしてわたわたしている薫子を見て笑う凛太郎というのは、接した時間は長いけれども、その薫子の天真爛漫さに惹かれた事はその時から変わらない、というのを示している。
「やっぱり、和栗さんが笑ってるとこ好きだな」自分本位ではなく相手の幸せの笑顔を愛おしく思う様が「愛」
凛太郎に声をかけられた時の「はい!?」は緊張しているのに、「おなか空いてない!?」で一気にナチュラルになる薫子の凄さは、声の演技で尚の事感じられたのは良かったです。こういう決める所では確実に相手に寄り添えるという事なので。
そしてりんご飴のかけらの部分まで初期の頃のようなテンション低めの演技をしていた凛太郎も、ここで一気に緊張が解けて元に戻ると。この辺りも凛太郎の成長が感じられて良い所でした。
しがらみなく夏祭りを堪能する2人。ここの凛太郎が射的で当てて、薫子にあげたうさぎのぬいぐるみは、原作が進んだ今でも薫子の部屋に大切にとってある。(ぐぬぬ顔の隣の男の子の顔が…)
そうやって楽しんで、急に告白の事を思い出して気まずくなる2人。その前に楽しんでいた気持ちが素直な気持ち、気まずいこの空気感が「告白」というキーワードが間にあるからこその、ある種「千鳥と桔梗」みたいな線引き。
でもそれを超える為にこうして場を作ってもらった事に、凛太郎は決意を固めて告白。この男らしさが器の大きさを物語っている。
薫子も緊張はしながらも、凛太郎に気を遣わせないように表情を緩めて「はい」という所に、薫子からの凛太郎の「愛」を感じる。細かな表情の変化、シチュエーションでも感情が伝わる大ゴマの使い方の上手さ。
撮影技術のエフェクトの贅沢さから始まり、ひたすら祭拍子に合わせて夏祭りを堪能する姿を描くその様は演出として凄くオシャレでしたね。夏祭りの雰囲気を感じつつも、2人の楽しそうな姿にほっこりする、というような。
そこから「どこかで座って休む?」のアニオリ部分は、ちゃんと薫子の草履を確認した上で凛太郎が休む事を改めて提案した辺りは、薫子のこれまで歩を進めてきた凛太郎への想いに凛太郎自身が応える、というメタ的な見方もできて、これまた凛太郎の成長が見えたような気がしました。
ここまで本当に薫子目線からしたら色々な凛太郎への想いを抱えてきた事ですから。
そこから街のカットが出て来てから並んでいるラムネのカットが映ったのは、その後のラムネのカットをここでも補完している感じがしましたね。遠くにある千鳥も桔梗も関係ない「街」の中で「二人は出会って隣にいる」というのも、ここで強調されていたように思います。
そして手が震えながらの薫子の「はい」ですけど、もう少し声のトーンは凛としてるかな、と原作を見ていた時は思っていたのですが、緊張からかテンション低めになっていたのが印象的でした。
やはりそこは薫子も凛太郎から伝えられる想いに、ネガティブな気持ちはないにしても、未知数過ぎて向き合う事への緊張が勝り過ぎていた部分はあったのかな、とは思わされたそんな演技だったと思います。
学校の事でも迷惑をかけたくなかった。笑顔が見られれば今のままでよかった。
それでも薫子との時間が終わってしまうのがすごく寂しくなって、付き合う人達はみんなこんな気持ちだったのかなと思ったら、思わず言葉が零れて…という、凛太郎が「好きです」と言葉にした理由の説明。ただ過ぎる時間をもって過ごしていた凛太郎が、身近にいる人たちのお陰で人と同じ感覚で物事を見る事ができた、という成長の証でもある。
このロトスコープ的見せ方も、1話の凛太郎の回想を思わせる形でドラマチックなんですよね。どれだけここまでの凛太郎が薫子を見てきたか、という話ですよ。
でもその次に出る言葉が、桔梗と薫子のしがらみが脳裏をよぎっての「我儘」「欲張り」「戸惑い」「自分勝手」というネガティブな言葉が、薫子の事を深く考えている故の自分への罪の意識のようなものを感じる。これはある種凛太郎に「薫子に会わないで欲しい」と言った昴とも重なる所がある。
でもその時に「ごめん、できない」と言った凛太郎はその言葉の意味を、「好きです」と気持ちが零れた事で知る事ができた。
「付き合うということが勇気や元気をくれる大切な人と、たくさん一緒にいられるものだとしたら、俺はそうなりたい」
「和栗さんと、もっと一緒にいたい」
「俺と、付き合ってください」
あれだけ悩んでいた「付き合う」という事の明文化が完璧な上に、紡がれている言葉の「勇気や元気をくれる大切な人」と薫子を形容している、凛太郎の「愛」が伝わる要素もある。
かつ「一緒にいたい」と感情の中で思っている事をストレートに言ってくれる、薫子からもらったその芯の強さ。
正に「全てを兼ね備えた」見事な告白だったと思う。
ここで改めて見えたラムネの瓶の並び、というのは、「2人の思い出を形にする」という意味合いはあったように思いますね。それこそアニオリで前回の話で使用済の花火が映し出されていたのと同じ理論だと思っています。
その後に吹く風の描写、薫子の髪飾りの花が揺れる描写は、この時点で2話の描写と重ねている部分はあったのかなと思いました。もうここから「2人の関係は動き出していた」というような。
薫子が凛太郎の「無償の愛」に救われていたという話。ここでの薫子の感覚はかなり独特な物となっている。好きになったきっかけとして主人公が覚えていない中で格好良いムーブをしたから、というのは凄いベタな展開ではあるものの、その「覚えていない」というのが嬉しい、と言っていたので。
何故なら自分にとって特別な出来事である「優しさ」を、凛太郎は1つ1つ覚えていない位自然と当たり前にする事ができるから。それほど優しい人だから、というのが聡明な薫子が考える「優しさの受け取り方」の秀逸さが見えたような気がした。
確かに色眼鏡で助けた、なら下心がかなり見えるけれども、その真逆を行ったという事は、分け隔てなく人に気持ちを向ける事ができる、という事なので、正に「千鳥と桔梗」の話にも繋がる部分になっているのが、テーマとの繋げ方としても上手いと思った次第。
薫子の1話でしていた事は、その凛太郎の優しさの「お礼」をしていたと考えると面白い。
「救われた」の所で足元を見せるのは、薫子自身あの時の凛太郎との出会いが救いとなった、というのを示したかったのはあると思います。
そして同じ構図を重ねて回想に入るこのカットインの仕方は間違いなく黒木監督の特徴の1つでしょうね。
出会ったシチュエーションは辛い事(この詳細は2クール目が放送されたら明かされる)が続いて傘もささない中で雪の中歩いていた時に、ケーキも食べる気にならない状態だったけれども、温かい雰囲気に惹かれて中に入った事が始まり。
そしてケーキの味も温かさが詰まったもので泣いてしまったと。「心を温かくなるようなケーキ」と凛太郎が作ったケーキについて感想を述べていたけれども、それはそのまま圭一郎から受け継いだ凛太郎の「味」なんだろうな、と思うと、薫子の「知りたい」は心の部分だったんだなというのを改めて思う。
ちなみにその「苦しくなるほど嬉しかった」と称する、薫子の涙を励ました凛太郎の言葉は今現在でも明かされていない。
ここで印象的だったのは、原作だとケーキ屋に辿り着くまでが右から左だったのが、アニメでは左から右にリバースしていた事なんですよ。
そしてドアを開ける時の向きも左から右と。これはアニメ演出的に左から右に進む事は好転の証なのでそこに当てはめたのかなとは思います。
OP映像だと凛太郎は右から左に走っていますけど、それはOPED映像の感想でも書いたように、左から右に進んでいる飛行機雲ごと傘を掴もうとしていたという意図があったと思うので、ここではストレートに行ったという事でしょう。
そしてここの傘もマフラーもしていない状態の薫子、というのはある種「もうどうでもいい」という投げやりの気持ちもあったと思うんですよ。そこから救われたのであれば…という納得感はあったと思います。
後は薫子の「覚えてないでしょ?」も普段のトーンと違って少し抑え目になっている分、少し悪戯っ子が大人になった感じをおぼえて、演技の幅としても良いなと思った所でした。
「私たちは学校とは関係ない場所で出会って、勇気や元気をくれたそんなあなたに、私は恋をしたの」
凛太郎の告白の薫子評である「勇気や元気をくれる大切な人」をそのまま返し、その「無償の愛」を学校関係での迷惑のカウンターとして返す…この台詞が「凛太郎がしてくれた事のお礼兼告白」になっている所に、薫子と凛太郎の気持ちが同じである、ということを示している。
前回からベンチで飲んだラムネが並んでいる描写がでているけれども、これは立場が違う2人が、思い出を共有して今隣にいる、という事を夏祭りの象徴の一つとして置いている、と考えられる。
そしてここから最終的な告白の返事の前に「薫子と凛太郎」の回想が入るのは、返事を最後の締めにしたかったんだろうな、というのが伝わってきた所です。いつもはカットされそうなモノローグもここではほぼカットされずに収録されていたので。
「そこに行く時はいつもより、丁寧にメイクをして、買ったばかりの服を身にまとって、失敗しないように慎重に髪を巻いてた。
鏡の前でチェックをしたら、わくわくしながら家の扉を開ける。
“また彼と話せるかも”なんて淡い期待に胸を躍らせて」
1つ、恋心を示す紫色の模様が小さく彩られる中始まった回想ですけど、ここを丁寧に描いた事で既に乙女心全開、というのが薫子の様子も相まって見られたのは良かった所です。
ドアを開ける時の構図は左から右に、そこから後ろ姿ではありますがスキップしながらケーキ屋に向かう薫子の可愛さをもうすでに感じられた所ではあったので。
最初は薫子の乙女心を外見のスタイリングの部分から凛太郎に会うために気合を入れていることが分かる。その後で「最初に会った時しかレジにいなかった」と判明している分尚更。(会える可能性が低いと分かっていてもオシャレをしていくいじらしさ)
ケーキ屋での杏子との会話で常連具合が分かる。「メニューを制覇しそうな勢い」もそうだし、杏子と仲良くなっているのもそう。
でも凛太郎が同じ学年と分かっていてもそれ以上踏み込む事ができない所が、まだ1話で見せてくれた「勇気」がまだ出ていないのが分かる。
ここの「しゅん」の時の落ち込み具合は結構可愛さが伴っているので多少余裕はあるんですよね。
でもここで食べるのではなく「持ち帰り」な事、凛太郎に関して声をかけなかった時は右から左の構図になっていた事からして、構図で勇気が出ていない事を示す事も出来ていたと思います。
デフォルメにする事で深刻さを打ち消しているのもまた良いと思った所です。
この後も厨房では見かけても話しかけるタイミングを見つけられない状態が続いていたので、恐らく凛太郎の「諦める」という当時は当然のように持っていた感覚に、薫子もなっていたのをオーバーラップさせていると思われる。「抱いていた淡い期待は、その頃には諦めに変わり始めていた」
ここで凛太郎の「名前」を知りたがっていたのは、杏子とは何回も話していたからこそ、「その人固有のものである”名前”」を知りたかったというのはある。正に「その人を知りたい」という感覚。
ここ、1話で走って逃げた時と同じ構図にしているのは、結構ネガティブな意味合いもあったと思いますし、正面にケーキ屋を見ているという構図を続けながら、でも最後はケーキ屋の外にまで追いやられているように感じたのは、どんどん気持ちが遠くなっていく様を示していたと思います。
紫の模様についても徐々にしぼんでいっていたように見えたので。
後薫子の台詞が「放課後に行った」ではなく「病院の面会」とはっきり言っている所に、2期の期待が出てしまうんですけどね…これが明かされるのが丁度2クール目の範囲内だったりするので。
そしてその諦めがオシャレも何もしていないタイミングで店に行ってしまい、ある種やけ食いのような形でケーキを食べたために、「オシャレも何もしてない子がケーキをバク食いしている図」を凛太郎に見せる事になってしまったと。正に1話の感想メモに書いた通り「薫子にとっての最悪の再会」となってしまったと。ある種諦める事の展開的な悪さを、前に進む事で良い方向に転ぶ事の逆説的な描き方で見せている。
しかも驚いて逃げるように店を飛び出してしまったので、上の諦めから来る負の連鎖はさらに続いていたと。「私のばか!」
でもその後悔から諦める事をしなかった事が、薫子と凛太郎の「本当の出会い」の始まり。オシャレをして、杏子に言う事の出来なかった「凛太郎に会いたい」という言葉を緊張の中で言ったと。正に最初の「最悪の再会」の真逆で掴み取った未来がここにはあった。
「知りたいの、あなたのこと。あなたの名前も知れないままなんて、いやなの」
でもその取っ掛かりとして「おごります!」が出てきたのは、緊張の中で糸口を作ろうとしていた、と考えると突飛でありながらいじらしくも思える。
ここの「今食べたいんです」の声の演技は、間違いなく空元気に聞こえたのは演技の方針が素晴らしいから感じられたのはあったと思います。ここで食べる事を決めた時点で動き出すものはあったとは思いますけど。
そこから一気に1話の構図に行くのが感慨深くもあり、驚く所は薫子視点になっていた所に最終回ならではの良さが見えていましたね。
「私のばか!」はちゃんと左から右に走っていたのと、紫の模様もここから一気に広がっていったところに、薫子の強い意思を感じた所でした。
そしてブラックアウトで「諦め」を示してから、オシャレする所で一気に自分の心と向き合う決意を固めて、ドアを開ける足元が映し出されると。ここは1話でも薫子の足元が映し出されてから凛太郎が薫子と対面しているので、そことの連動もあったように思います。
からの少し泣きそうになりながら「その人に会いに来たんです」の描写は、本当に薫子が勇気を出して凛太郎に近づこうとしたんだなと感じられて、感情移入できた所ではありました。
待っている間にガラス越し(多分ランプ?)に薫子を映すカットは4話で昴を映していた時と同じではあるので、恐らく黒木監督が重ねていた所だったと思うのですが、それも一瞬だったので「突き破った」部分を強調していたように思いました。
から、ここで右から左に凛太郎を見ていたのは、上でも書いた凛太郎が「右から左に走っていた理由」と同じでしょうね。自分からそれをつかみ取ろうとする気持ちの強さの表れ、というわけです。
そして翌日の桔梗の教室。朝早く自習をしていても肩を抱かれた事が頭から離れない薫子。
この勉強面でのストイックさと、凛太郎から来る感情に振り回されているこのギャップが薫子に感情移入できる所になっている。
そしてカーテンを開けたら凛太郎が千鳥の校舎に居ると。
「…もしかして凛太郎くんって、千鳥の生徒だったの!?」は凛太郎の反応とほぼ同じだけれども、凛太郎はそこから「千鳥の自分なんかと関わっても何も良い事はない」と後ろ向きになっていたのに対し…
「…どうしよう、うれしい。凛太郎くんが…こんな近くにいたなんて…!」
となるのが、そもそも千鳥と桔梗に隔たりを感じていない事を示しているし、寧ろ凛太郎を近くで感じる事ができる、という良い面に目が向いて「嬉しい」となっているので、これはなるべくして凛太郎の彼女になったんだな、という強い説得力が出ていた。
まず、凛太郎に肩を抱かれた所を回想しているシーンにて遠くに「消しきれていない黒板」が映し出されたのは、いけない事だと分かっていても恋心を止める事ができていない薫子の心情を上手く表していたと思います。
そこから2話冒頭で出てきて、原作の2話の扉絵ともなった「薫子がカーテンを開けるシーン」に繋がると。
凛太郎からしたら結構あっさり描かれていたこのシーンが、薫子からしたら恋心が完全に花開いた劇的なシーンに映っていた、というこの演出と構図の違いが、話数を積み重ねてから見ると感慨深さが増すように作られているのが、アニメならではの特権だよなと思わされた所でした。紫の模様が完全に広がったのも個々でしたしね。
それは薫子の声の演技も乙女心全開にもなりますよ。光が少し刺す中、並んでいる椅子の向こう側で薫子が座り込んでいる様は、千鳥と桔梗の関係性の意味合いからしたら小さな事でも、薫子にとっては凄く大きなことだったというのが示されていたと思います。
「こうして私の初恋は走り出した」
凛太郎への想いが「初恋」になったのはここからなのか、と考えると、接点を作って近くにいる事を知る事ができた喜びが爆発した、という事だろうか。
その後にしたのが「校門の前で待つ」だったので、舞い上がり方としては凄い事になっていた気はする。軽率とも思うが、千鳥と桔梗に隔たりを感じていない故の行動だったともいえる。
ここで回想は終わりと。いやはや劇的な薫子の回想だったと思います。
そして目と目が合う真正面に薫子は立って…
「私は和栗薫子です。そしてあなたは紬凛太郎くんです。千鳥と桔梗なんて関係ない。他でもないあなただから、私は知りたいと思ったの」
「気持ちを伝えてくれてありがとう。私でよければこちらこそよろしくお願いします」
「私も凛太郎くんが、大好きです!」
以前はできなかった感情をそのまま伝える、という事をしてくれた凛太郎に対する薫子の「最大の感謝」を今までしてきた、かつ凛太郎が大好きな「自分の笑顔」で返す、というのが、これも薫子の芯の強さを感じられる場面になっている。嬉しいという自分の気持ちよりも凛太郎の気持ちを優先したわけなので。
この告白の返事の薫子の表情の作画力は凄まじかったですし、2話の台詞を重ねる所はちゃんと2話と同じ空間の中で描いている、というのも演出力の凄さを物語っていたと思います。
アニメ版の「私も凛太郎くんが、大好きです!」を見れた事は、当時告白回に盛り上がった原作を見ていた頃が鮮明に蘇るような感覚になれた、という意味でも凄く大きかったと思います。それだけ気合が入っていたという事なので。
ちなみに35話から40話までは、「彼等の真っすぐさ何度も泣きながら描いた回」と三香見先生が6巻のカバーコメントで話しているんですよね。それはここまで気合が入ったものになるという物です。
そしてED前最後の〆は凛太郎のアニオリの台詞で。
「勇気を出して良かった。
隣の校舎はカーテンの向こう側。俺には一生関係ないと思っていた世界から、思いっきり手を振ってくれたあなたの事を、知る事ができたから」
思いっきり手を振ってくれたのはアニオリ準拠ですけど、薫子の無邪気かつ凛太郎の事を真っ直ぐに見てくれるその様を凛太郎は好きになったんだろうな、と思うと凄く心に来るものがありますし、
この2話の薫子の笑顔から僕の「薫る花」との関わりが始まった事を考えると、〆がこの台詞で良かったなと心から思います。「知る事」という言葉も正に「薫る花」を象徴する言葉でしたから。
そして足元を見せた上でこれもまた右から左に進んでいるカットですから、ここも徹底されていたなと感じた所でした。
そしてそこから流れるのがやっとこさお披露目のファーストPVの曲である「ひとひら」ですね、
このアニメは「ひとひら」に始まり「ひとひら」で終わったと考えるとこれ以上ない構成だったなと思わされます。一応今回流れたバージョンはテレビバージョン、という事で、円盤の特典でCD化待ってます。
特殊EDの映像は一枚絵の数々。最初のカットは「告白の翌日」での電話のシーンでしょうね。
そこからの部分はカットされた「夏休みの過ごし方」からのサッカーシーンと勉強合宿のシーンの合わせでしょうね。補完としては非常に上手なカットだったと思います。
そしてケーキ屋を手伝う凛太郎、参考書を探す薫子と昴、勉強会の千鳥組ですね。日常のカットですけどそれだけで微笑ましくなる部分でした。翔平は相変わらず寝ているのか…とはなりましたけど(笑)
そこからは世界線的にはほぼ1年経っていると思うのですが、桔梗組6人のスイーツショップでの自撮りを千鳥組が見ている構図なんですよね。
勉強会自体が夏ではなかったのでケーキ屋を手伝う凛太郎のカットから夏は終わっていると思うのですが、スイーツショップでの服装が夏なのとこれがまどかによる自撮りなので、このカットは間違いなく1年後の夏だと思うんです。
まあ原作の現状の状態からして夏休み中の描写でしょうね。ここで未来が示唆された事で2期にもつなげやすくなっているのもまた、サービスカットとしては良く出来ていたと思います。
…まあアニメだけの人からしたらここのシーンでそこまで語る事はないとは思うのですが。後こうして見ると服装の趣味が同じだからか薫子とすずかの仲の良さが見えると言いますか。
そしてラストカットは制服姿の凛太郎と薫子が笑いながら向き合っているカットと。原作でも「カーテンの向こう側」の扉絵が凛太郎と薫子の制服姿での並び歩きでしたけど、それを彷彿とさせるような「千鳥と桔梗の交わりの一端」を見る事ができた良い〆だったと思います。
本格的な交わりについては2期が放送されたらそこで描かれると思いますのでそこをお楽しみにという事で…
というわけで心に深く刻まれた最高の「薫る花」のアニメ化でした!
詳しい事は後日統括記事にてざっくばらんに書いていく事になりますが、感想記事としてはここで締めとなります。
1年前のファーストPVから待ちわびたアニメ化がここまでの物になった事には感慨深い気持ちでいっぱいです。
このアニメに携わった全てのスタッフの方に感謝申し上げます、本当にありがとうございました!!


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